DDW2010(Digestive Disease Week 2010)は2010年5月2日から5日までアメリカのニューオリンズで開催され、自分は芳賀弘明先生の発表について参加させていただく機会に恵まれた。ニューオリンズはおろかアメリカへ行く事すら生涯初めての経験であった自分にとって、目的地であるニューオリンズの印象と言えば、ジャズの本場で黒人が大勢いる街というステレオタイプのものであり、海外へ行けるという期待や高揚感より、むしろ漠然とした不安や緊張の方が勝っていた。そのため、現地へ無難に到着し、そして日本へ無事に帰還する事を個人的には第一目標に据えつつ、かくして、仙台空港発、成田、ワシントン経由、ニューオリンズ行きの学会参加の旅は幕を開けた。
DDW2010は今更触れるまでもなく、参加人数が15,000人を越える消化器領域では世界最大の学会である。今回会場となったErnest
N. Morial Convention Centerは端から端まで約1km弱もある巨大な建物で、中ではその巨大なスペースを余す事無く、各種講演会場を始め、ポスター会場、教育ブース、企業ブースなどが展開されており、国内学会しか知らなかった自分はそのスケールの大きさにとても驚かされた。また、内容はNOTESなど先進的なものも数多く、様々な人種のたくさんの人々で会場はごった返していたが、望郷の念が手伝ったのか、その中に日本人が思いのほか多くいることが目につき、発表内容もよく見てみると日本からのものが比較的多いように感じられた。国内のみならず視野を世界に広げ、オリジナルな知見を発信する重要性を肌で感じられた事は自分にとって収穫だったように思う。
一方今回、全体的に比較的タイトなスケジュールではあったが、せっかくここまで来たのだから、ということで、学会だけではなく空いた時間で観光も楽しませていただいた。
自分が最も強く感じられたのは、街の至る所に音楽が溢れている幸福である。中心街であるフレンチクオーターやバーボンストリートでは、ざわついた雑踏の気配の中で、ライブハウスの開け放した窓から流れてくるソウルフルなボーカルや街角の賑やかなブラスバンド、そのうねるような音楽のリズムが、バーのざわめきやグラスを合わせる音と一体となって、まさにニューオリンズを体現化していた。特に、ジャズの生演奏で有名なPreservation Hallへ出向いた際には、観客席からほんの数メートル前で行われた喜怒哀楽豊かな迫力のパフォーマンスに本当に興奮し感動を覚えた。また、市内に目を移すと市電や観光馬車などが行き来し、エキゾチックなアイアンレースで彩られたギャラリーや、そのまま絵はがきにでもなりそうな清廉な雰囲気溢れるジャクソン広場など、19世紀の香りが漂う美しい街並みを見ることができた。さらに、街のすぐそばを流れるミシシッピ河では昔ながらの蒸気船が運航しており、それら美しい街並みを横目に見ながら船上で風に揺られていると、しばしの間ではあったが日頃の喧噪を忘れ、心が洗われるようにも感じられた。
その他にも様々な貴重な思い出を作ることができ、幸いにも出発前の心配は全くの杞憂に終わった。普段触れることのできない世界にほんの少しの間でも接することができたことは、今後の自分にとっての一番の財産になったことと思う。この貴重な経験を心に留め、モチベーションを保ちながら、今後の研究や臨床に少しでも還元できるよう努力していきたい。
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