肝臓の検査・病気について
第1回 はじめに 〜症状乏しい肝臓の異常〜
肝臓は、体の中では“化学工場”と呼ばれており、「胆汁」という消化液を作ったり、エネルギー源である糖分の働きを調節したり、大事なタンパク質を作っています。また、薬を解毒したり、酒を分解するという大切な働きをしてくれています。
肝臓の病気で一番多いのは、肥満や食べ過ぎによる脂肪肝です。酒の飲みすぎでもやはり脂肪肝になります。脂肪肝は、文字通り肝臓に余分な脂肪がたまっている状態です。フランス料理によく出るフォアグラはまさにガチョウの脂肪化した肝臓なのです。肥満気味の四十歳以上の男性では、約50%の人が、脂肪肝と言われています。健康診断で脂肪肝といわれたら、カロリー制限と散歩などの運動を心掛けましょう。同時にお酒も減らしましょう(メモ参照)。
その次に多く、しかも最も注意しなければならない肝臓病は、やはりB型やC型肝炎ウイルスによって起こるウイルス性肝炎です。とくにC型肝炎は慢性化しやすく、20年―30年を経て、慢性肝炎から肝硬変や肝がんに進行します。C型肝炎ウイルスは血液を介して感染するので、以前は手術などで受けた輸血で感染した場合が多いようです。ところが、約十年前から輸血する血液にC型のウイルスが入っていないことを確かめてから輸血するようになったので、現在では輸血による感染はありません。C型肝炎の治療にはインターフェロンという薬がよく効きます。最近では新しい抗ウイルス薬(ウイルスの増殖を抑える薬)と一緒に使うようになったので飛躍的に効果が増しています。今後さらに新しい治療法が登場するので、C型肝炎の克服もそう遠い将来ではないといえます。
肝臓は「沈黙の臓器」といわれ、症状に乏しいのが特徴です。それでも目が黄色くなったり、尿が紅茶のように濃くなったときは黄疸(おうだん)が出ています。また、歯茎から出血したり、知らない間に皮膚に青あざが出ている場合にも肝臓病が疑われます。また、慢性の肝臓病のときには手のひらが赤くなるので自己診断に役立ちます。これらの症状に気付いたら、肝臓が傷んでいるかもしれません。医師の診察を受けましょう。

肝臓を傷めないために、日本酒なら一日二合まで、ビールなら大びん2本まで、ウイスキーダブル水割りなら二杯までにしましょう。二種類の酒を楽しみたいときには、例えば日本酒一合とビール1本と考えましょう。そして、週二日は休肝日としましょう。

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