我が国全体で医師不足が社会問題となる中、医学部の入学定員増や各地での医師確保対策などさまざまな対応が図られているが、医師数について議論する場合、一般的には人口当たりの医師数の国際比較や都道府県・二次医療圏比較が参照されるものの、地域の医療需要や医師の労働時間といった診療実態に基づいて、地域別、診療科別の医師の過不足を推計するような試みは、これまでのところなされていない。厚生労働省医政局は、2010年に全国の病院等における必要医師数の調査を行ったが、これはそれぞれの病院等の主観的な判断による必要医師数を集計したものであり、客観性を担保することができない。
そこで、本調査では、山形県の将来必要医師数をより客観的に把握する目的で、二次医療圏別の将来医療需要を推計し、それをもとに将来必要医師数の推計を行った。その際、「医師・歯科医師・薬剤師調査」のデータを厚生労働省に目的外利用申請し、二次医療圏ごとに診療科別医師数の動向を年齢構成別に把握し、今後の医師数の変化もシミュレーションした上で、将来必要医師数を算出した。また、医師の過重労働が問題になっている状況も踏まえ、過重労働の是正を加味する形でのシミュレーションも行った。
ただし、こうした将来推計は、足元の患者の受療行動や県内医師の動向を将来に投影させただけのものであり、いずれかの仮定が少し変化するだけでも、将来の姿は異なってくる。特に、近年、医療機関の機能分化を促進する政策が相次いで講じられているけれども、医療提供体制が変化すれば、必要となる医師数は大きく変化することになる。言い換えれば、医師不足への対応を考える上で、医療提供体制の見直しを避けて通ることはできない。
したがって、このシミュレーション自体は、絶対的なものではなく、あくまで参考扱いとすべきものである。とは言え、そうした点に留意しつつ、山形県内で今後必要となる医師数や医療提供体制の見直しの方向性を検討する上で、一つの参考材料になるのは確かであろう。本調査報告書が、山形県における医師確保対策や医療行政の企画立案を進めていく上での一助となれば幸いである。
- 伊藤嘉高、佐藤慎哉、山下英俊、嘉山孝正、村上正泰:山形県におけるコホートモデルを用いた診療科別将来必要病院勤務医師数の推計.
山形医学. 2013; 31 (2): 15-25
「山形県内将来医療需要・必要医師数推計」報告書(2012年3月)

1. 推計の背景と目的 5
2. 推計の方法 6
- 将来医療需要推計 6
- 将来必要医師数推計 6
3. 将来患者数の推計 8
- 人口と推計患者数の推移 8
- 傷病分類別推計患者数の推移 10
- 二次医療圏越境推計患者数 18
4. 医療機関種別将来患者数の推計 21
- 医療機関種別患者数の推移 21
- 疾病分類別にみる医療機関種別患者数の推移 25
5. 診療科別患者数の推計 31
- 全県の診療科別患者数の推計 31
- 二次医療圏別の診療科別患者数の推計 40
6. 将来医師数の推計 45
- 現状の性別・年齢構成 45
- 医師離入率 50
- 将来医師数推計 52
- 診療科別将来医師数推計 57
7. 将来必要医師数の推計 64
- 医師一人当たり将来患者数推計 64
- 二次医療圏別にみる勤務医一人当たり将来患者数推計 69
- 過重労働状況を加味した将来必要医師数推計 74
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医療政策学講座 助教 伊藤嘉高
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