新たな春
  ようやく春を迎えた日、高速バスで仙台から山形に戻る際に、東北自動車道から山形道に 入りしばらくすると県境の笹谷トンネルに至ります。このトンネルを抜けてまず目にする のは、西に沈む太陽と白い頂が残る朝日連峰です。そして、山々に囲まれた緑の山形盆地 です。
 同じ時期、東京へ出張して山形に戻る際、上山を過ぎたあたりで桜桃や林檎などに咲く花 が列車の車窓から眺められ、春を実感させられます。山形大学飯田キャンパスは、ここ十 数年で宅地や商業施設の開発が進みましたが、少し南の蔵王地区には古い街並みが残され 、田園の中に果樹園が点在しています。
 春の夜に果樹に咲く花の仄かな香りが漂う山形盆地は、日本国民の素晴らしい財産です。 中唐の大人李白の漢詩にあるように、短い春を、楽しめるときに精いっぱい楽しむこと ができる土地です。新たな春を迎え、また、学生講義が始まります。
春夜宴桃李園序
李白
夫天地者萬物之逆旅  夫れ天地は萬物の逆旅にして
光陰者百代之過客    光陰は百代の過客なり
而浮生若夢      而して浮生は夢の若し
爲歡幾何       歡を爲すこと幾何(いくばく)ぞ
古人秉燭夜遊     古人燭を秉り夜遊ぶ
良有以也       良(まこと)に以(ゆえ)有る也
況陽春召我以煙景   況んや陽春の我を召すに煙景を以てし
大塊假我以文章    大塊の我を假すに文章を以てするをや
 
 そもそも天地は万物を迎え入れる旅館のようなもの、光陰は永遠の旅人のようなものだ。 そして人生とは夢のようなもの、楽しさも人生と同じで長くは続かないものだ。昔の人は 夜も蝋燭をともして遊んだというが、それにはこのような理由があるのだ。いわんや陽春 は美しい景色で私を招き、大地の恵みは私に文章の才を授けてくれたのだ、大いに春を楽 しもう。  
平成25年 4月 5日
藤井 聡

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