春にして君を離れ
 アガサ クリスティーの小説に「春にして君を離れ」がある。第二次世界大戦前、娘の病気見舞いに 行ってバクダットからイギリスに帰る途中の中年の婦人が、列車が来ずに数日間足止めをされて、ひとり砂漠の宿泊所 で一人で過ごす。その間に自分を見つめ直し、自分がいかに自己中心で、家族から愛されていなかったと気づき、悔い 改め変わろうと決意する。しかし、現実の生活に戻るとその決意が薄れ、元の生活を続けてしまう。その内面の葛藤を 丹念に描いている。
 春は別れの季節だ。大学は若い人たちを世の中に送り出す。若い人たちの将来を想い、次の年はどうするか、講義の やり方を大幅に変えるか?斬新な内容にするか?決意を新たにするが、現実の世界に戻ると、時間が限られる上に世事 に忙殺され、カリキュラムに埋没してしまう。
 大学を離れる君達に告げる。私達は君達に期待する。また会おう。
平成24年3月26日
藤井 聰

アガサ クリスティー
 1890年、イギリスのデヴォン州トーキーに生まれる。中産階級の家庭に育つが、のちに一家の経済状況は悪化してしまい、 やがてお金のかからない読書に熱中するようになる。特にコナン・ドイルのシャーロック・ホームズものを読んでミステリ に夢中になる。
 1914年に24歳でイギリス航空隊のアーチボルド・クリスティーと結婚。1928年にアーチボルドと離婚し、1930年に考古学者 のマックス・マローワンと結婚。長篇、短篇、戯曲など、100以上の作品は現在も全世界の読者に愛読されている。その功績 をたたえ大英帝国勲章が授与されている。1976年没。

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