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海洋汚染

 1988年の6月、北海沿岸のイギリス、ノルウェー、デンマークなどの海岸のあちこちで大量のアザラシの死体が打ち上げられました。大量死が起こる前、約2万頭前後いた北海のアザラシがわずか10ヵ月あまりの間に、およそ9割にあたる1万8千頭近くが死んでしまったのです。死因はライン川やテムズ川から流れ込む産業廃水、生活排水、北海油田や船から流れ出す油だといわれています。 死んだアザラシからは高濃度の水銀やカドミウム、それに鉛やPCBなど150種類もの有害物質が検出されました。

 その他にも1989年にはアラスカ南岸で大型タンカーの座礁事故が起こり、3.5万トンもの原油が流出する事件がありました。これは日本海流出事故の時に流れ出た原油の約7倍の量です。この事故で2500キロメートルにおよぶ海岸が汚染されました。わずか8ヶ月間にラッコ1千頭以上、鳥類3万6千羽が死亡しました。ほかにもアザラシ、アシカなどに影響があり、現在もまだ完全には回復しているわけではありません。

1. 陸上の人間活動が海を汚す主な原因

 海洋汚染というとタンカーによる流出事故など、石油による汚染がすぐ頭に思いうかびますが、石油以外に海洋汚染を引き起こさす原因として以下のようなものがあります。

1)化学物質・重金属
 ダイオキシン 、PCB(ポリ塩化ビフェニール)、DDTを始めとする化学物質や水銀、カドミウムなどの重金属はカネミ油症、水俣病、イタイイタイ病などを引き起こしたことで知られています。ダイオキシンは遺伝子に突然変異を起こし、奇形やガンを引き起こす猛毒物質で、ベトナム戦争で枯れ葉剤として使用され、大きな被害を出したことでも有名です。このダイオキシンはプラスチックや塩化ビニール、塩素化合物が燃焼することで大量に発生します。
 現在、ゴミ焼却場から出る焼却灰は埋め立てによって処理されています。この焼却灰によって土が汚染され、それが溶けて水を汚染します。また焼却することで大気が汚染され、海を汚染していきます。日本近海の魚介類から高濃度のダイオキシンが検出されたという報告も出ています。 これらの化学物質・重金属やダイオキシンが沿岸の海にたまると、まずプランクトンの体内に汚染物質が蓄積され、そのプランクトンを食べた魚にさらに蓄積され、その魚をアザラシが食べることになります。こうした食物連鎖の過程で重金属や有害化学物質が濃度を高めながら生物の体内にたまっていく生物濃縮が起こり、アザラシ大量死事件が発生したのです。

2)放射性廃棄物
 以前、ロシアが老朽化した潜水艦の原子炉を解体し、日本海に投棄したという報道がありました。また1995年にはフランスのシラク大統領がムルロア環礁での核実験を再開しました。原子力が発見されてからまだ50年しか経っていないのに、その廃棄物は山積みで、安全な処理方法は見つかっていないのが現実です。しかも放射能は100万年単位で影響を及ぼし続けるために、その被害ははかりしれません。 これらは原発や核兵器を保有する国のすべてに共通する問題であり、それは原発に頼る便利で快適な生活をしてる私たち自身の問題なのです。
 UNEP(国連環境計画)の報告でも世界中の海洋汚染の汚染源は、そのほとんどが各種工場や発電所などの陸上の人間の活動によるといわれています。海洋汚染は、土壌汚染、大気汚染、河川の汚染などときりはなすことのできない問題です。

3)日々の生活排水による汚染
 水俣病などの公害問題をだした高度経済成長期からは規制が進み、工場などから出される排水はかなり減少しました。しかし家庭には規制がないため、生活排水による汚染が大きくなっています。1991年の環境庁の報告では瀬戸内海では約5割、東京湾では約7割が生活排水による汚染です。そしてその半分以上が台所から出る排水によるものです。たとえばコップ一杯の天ぷら油を流しから捨てると20万倍の水で薄めないと魚が住めるようにはなりません。これは家庭用のお風呂で200杯分の水に相当します。牛乳や醤油など一見捨てても大丈夫なように思われるものでも5千倍及び約3万倍の水が必要となるのです。また洗濯や台所で使う洗剤の多くは、石油を原料とした「合成洗剤」です。この化学物質からできた合成洗剤は、30日たっても3分の1以上も分解されないばかりか、100日すぎても残留してしまいます。

2. 海洋汚染を防ぐためにできること

 海洋汚染の現状を知ることが大切です。海洋汚染の源になる生活排水を海に流さないことが大切です。いったん水を汚してしまうともとの水に戻すためにはその何万倍もの水と時間が必要です。
 台所から出るごみや油は水に流さない。鍋についた油分は古新聞などでふきとる。洗剤やシャンプーなどは化学物質を使わない製品を使う。こうした工夫を一人一人が考え実行していくことが大切です。また電気の使用量を減らすことは原子力発電所を減らし、放射線廃棄物による海洋汚染を減らすことに繋がります。これらの“ちょっとしたこと”を通して、私たちの生活を見直すことが大切です。大量消費、大量廃棄型の社会から自然と調和する社会への転換をはかっていきましょう。