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オゾン層の破壊

目次
1. オゾン層の出現とその作用
2. オゾン層の破壊
3. フロン(flon)とは
4. オゾン層破壊のしくみ
5. オゾン層の破壊による影響
6. 対策と新たな問題

1. オゾン層の出現とその作用
 地球の誕生は今からおよそ46億年前といわれております。原始の海で単細胞生物が誕生して以来、約32億年もの年月を費やして酸素が作り続けられてきました。 約5億年前に酸素濃度が現在の1/10程度となり、オゾンの形成が始まりました。
 オゾンは大気中の酸素が太陽光の紫外線の作用を受けてつくられます。大気中のオゾンの約90%は地上から20〜30km上空の成層圏と呼ばれる領域で、地球をすっぽりと覆う薄い層を構成しています。オゾン層と呼ばれるこの層の厚さは、1気圧で換算すると、たったの3ミリになるそうです。
 地球をとりまくオゾン層は、太陽光に含まれる紫外線のうち有害なものの大部分を吸収することにより、生物が海から陸上へ進出することを可能にし、現在のような多様な生物種が地球上に見られるようにりました。我々人類が陸上で生存できるのもこのオゾン層に守られているお蔭です。

2. オゾン層の破壊
 紫外線にはビタミンDを作るのに必要な紫外線A(UV-A)と、紫外線Aより波長の短い紫外線B(UV-B)があります。UV-BにはDNA(deoxyribonucleic acid;デオキシリボ核酸)に異変を引き起こし、細胞がまともに働かなくなったり、異常な性質を持った細胞の出現をもたらすという、人類にとって有害な作用が有ります。
 これまでUV-Bはオゾン層がこれを遮断していたために、地表にはほとんど降り注ぐことはありませんでした。しかし、文明社会の生み出した化学物質の使用が、オゾン層の破壊をもたらしました。オゾン層を破壊しているのは、人間が作り出したフロンという化学物質です。
 1974年、F.S.ローランドらは「Nature」にフロンによってオゾン層が破壊されるという論文を発表しました。1980 年代初め頃になると、9 月から11 月にかけて南極上空のオゾン全量が著しく少なくなる現象が現れるようになりました。1985年にはJ.ファーマンらが「南極オゾンの大規模消失」という論文を発表しました。1987年にはNASAが人工衛星データーからこの現象を確認しています。
 オゾンが著しく減少した状態をオゾンホールと言います。オゾンホールは1992 年以降は大規模なものが毎年現れており、通常は9月下旬から10 月上旬に最盛期を迎えます。地球を覆っているオゾン層は年々薄くなっおり、特に南極のオゾンホールは拡大し続けているとのことです。現在では北極でも同じような現象が報告されています。

3. フロン(flon)とは
 フロンはメタン、エタンなどのフッ素置換体の総称で、わが国における慣用名です。多くの 場合、フッ素以外にも塩素をも含むのでクロロフルオロカーボン(CFC ; chlorofluorocarbon)とも称されます。
 フロンは1928年にT. Midgley(ミジリー)によって発見された物質で無色、無臭で毒性が低く、不燃性で化学的に安定であるうえ、種々の化学物質をよく溶かすことから、噴霧剤やウレタンフォームの発砲剤、冷媒、電子部品等の洗浄剤として用いられてきました。代表的なフロンガスを表に纏めておきました。

 一般名  化学式  融点  沸点
 F-11  CCl3F  -111  3.8
 F-12  CCl2F2  -155  -29.8
 F-22  CHClF2  -160  -40.8
 F-11  C2Cl3F3  -35  47.6
 F-11  C2ClF5  -106  -38.0

フロンは化合物によりコードナンバーが決められています。
表中の一般名についている数字は次のようなことを表します。
1位の数はそれぞれのフロン分子中に含まれるF(フロン)原子の数
10位の数はH(水素)原子の数+1
100位の数はC(炭素)原子の数−1

4. オゾン層破壊のしくみ
 フロン(F-11)によるオゾン層の破壊の仕組みについて図に示します。大気中に放出されたフロンは空気より重い性質のためゆっくり暖められて上昇し、約15年という長い歳月をかけて成層圏に到達します。フロンに紫外線があたると、フロン分子(CCl3F)のなかから塩素原子(Cl)が飛び出し、この塩素原子が触媒作用によって、次々と約10万個のオゾンを連鎖式に破壊します。

 現在のオゾンを破壊しているのは15年前に私たちが放出したフロンで、それは今まで放出した総量のわずか10%に過ぎないと推測されています。たとえ現時点で、フロンの放出が完全にストップされたとしても、今までに放出されたフロンが今後、数十年間にわたって、次々とオゾン層を破壊していくことになるわけです。
 塩素の代わりに臭素を含むもの(ハロン;消化剤として使用)もオゾン層破壊作用があり、さらに一部の有機塩素系炭化水素にも破壊作用が認められています。 また、フロンのもうひとつの特性として、地球温暖化を引き起す非常に強力な温室ガス効果をもっているということも忘れてはなりません。

5. オゾン層の破壊による影響
 UNEP(国連環境計画)の発表によると「オゾン層が1%減少すれば、地上に降り注ぐ有害紫外線(UV-B)の量は2%増え、皮膚ガンが3%増加する」といわれています。これは「1, 2, 3 ルール」と呼ばれています。皮膚ガンや失明、白内症などの影響が、オーストラリアやチリをはじめとして世界各地で顕著となってきました。
 オーストラリアではこの7年間で皮膚ガンの死亡率は2倍に増加したそうです。オーストラリア、カナダ、ニュージーランドなどの先進国では天気予報のなかで、バーンタイムについての注意報を流しています。バーンタイムとは直射日光を浴びる許容時間のことで、例えば「バーンタイム20ミニッツ」は直射日光を20分以上浴びないようにという意味です。
 オゾン層破壊の問題はオーストラリアや南米などだけでなく、すでに日本でも深刻な状況になってきました。私たちを有害紫外線から守っているオゾン層がなくなってしまうと、いったいどうなるのでしょうか。オゾン層が形成される4億年以前の陸上では、生物が生きていくことはできませんでした。現在でもオゾン層が破壊されて消失してしまうと、ほとんどの生き物は陸上では生存不可能となるでしょう。

6. 対策と新たな問題
 国際的に協調してオゾン層保護対策を推進するため、「オゾン層の保護のためのウィーン条約(1985年3月)」及びこの条約に基づく「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書(1987年9月)」が採択され、一定の種類のCFC及びハロンの生産量等の段階的な削減を行うことが合意されました。
 更にその後、従来の予測を超えてオゾン層の破壊が進んだため、1990、1992、1995及び1997年にモントリオール議定書の改正等によって、CFC等の生産全廃までの規制スケジュールを早めたり、新たに規制物質を追加するなどの規制が強化されてきました。1995年末にはCFCの生産が全廃されました。
 しかし、過去に生産され冷蔵庫、カーエアコン等の中に充填されているCFC等が相当量残されており、これらの機器が廃棄される際に、CFC等が大気中に排出されるおそれがあります。これを防ぐために使用済みのCFC等を回収し破壊することが重要です。
 こうした規制が行なわれるようになってからも、オゾンホールは拡大する傾向にあります。オーストラリアやニュージーランドや南米ではヒト以外にも、牛や羊などの失明や皮膚がんの被害が増加しています。いくら特定フロンの規制を強化しても、100種類以上あるすべてのフロンを規制するものは未だありません。また代替フロンのなかにも、特定フロンほどではないにしても若干のオゾン層破壊力があったり、温室効果がCO2よりもはるかに強く、地球温暖化という新たな問題を引き起こす物質もあり一筋縄では解決できないのが現状です。

7. 関連用語の説明
1)オゾン全量( m atm-cm )
 オゾンはオゾン層を中心に大気のあらゆる高度に存在しておりますが、観測地点上空の大気の上端から下端までの全層に存在するオゾンを集めて0 ℃、1 気圧の状態にしたときの厚さによってオゾンの全量を表します。
 cm で表した数値を1000 倍してm atm-cm (ミリアトムセンチメートル)の単位で表示すします。ドブソンユニット(DU)と表すこともあります。日本付近では250 〜450m atm-cm 程度の値となります。

2)オゾンホールの規模
 オ ゾンホールの強さまたは規模を定量的に表現するための世界的に統一された尺度はありません。我が国では気象庁が南緯45度以南におけるオゾンホールの状況を表す次の3つの要素を定義し、人工衛星による観測資料を用いてオゾンホールの規模を評価し、公表しています。
 a オ ゾンホールの面積
 オゾンホール発生以前には広範囲に観測されなかったとされるオゾン全量が220m atm-cm以下の領域の  面積(万km単位)。オゾンホールの広がりの目安を与える量。
 b 最低オゾン全量
 観 測されたオゾン全量の最低値(m atm-cm 単位)。
 c オ ゾン破壊量
 観測されたオゾン全量を300m atm-cm (オゾン全量の全球平均値)に回復させるために必要なオゾンの質量(万トン単位)。オゾンホール内で破壊されたオゾン総量の目安を与える量。

3)極渦(極夜渦)
 極域上空の成層圏においては、太陽光が射さない冬季(極夜)の間に、極点を中心として非常に気温の低い大気の渦が発達する。これを極渦という。

4)極域成層圏雲(極成層圏雲)
 極渦の内部の成層圏の気温がミ78 ℃以下に低下すると、硝酸や水蒸気からなる極域成層圏雲(PSCs)が出現する。通常、クロロフルオロカーボン類(CFCs )から解離した塩素の大部分は、下部成層圏ではオゾン層を破壊する作用のない塩化水素や硝酸塩素の形で存在しているが、極渦内部に極域成層圏雲が発生するとその雲粒子の表面で特殊な化学反応が起こり、これらの物質から変化した塩素ガスが大気中に大量に放出される。塩素ガスもオゾンを破壊する作用はないが、光によって壊れやすく、春になって太陽光線が射すと解離し、活性な塩素原子が放出され、オゾンの破壊が急激に進行すると考えられている。