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教授挨拶

医療政策学講座 教授 村上 正泰
医療政策学講座 教授
村上 正泰

医療政策学講座では、我が国の医療提供体制や医療保険制度のあり方について、医療政策に密接に関連している社会科学分野(法学、経済学、社会学等)の知見も幅広く活かしながら、他講座や県内の医療機関、行政機関等とも連携し、研究を行っています。

我が国の医療制度は、世界に冠たる国民皆保険制度の下で高い保健医療水準を実現しており、国際的にも高い評価を受けています。その一方で、近年の医師不足問題の深刻化や救急医療における受け入れ不能事案(いわゆる「たらい回し」)の頻発、自治体病院の相次ぐ閉鎖・民営化、「ドラッグ・ラグ」の問題など、医療現場は問題山積の状況であり、「医療崩壊」ということが喧伝されています。

医療の世界には公的な規制が数多く存在しており、診療報酬制度をはじめとする政策の動向次第で医療のあり方は大きく左右されます。したがって、医療現場で生じているさまざまな困難を解決し、国民一人ひとりが質の高い医療を受けられるようにするためには、その背後にある政策上の問題点を明らかにした上で、時代の要請に適合した医療政策のあり方を構想していくことが不可欠であり、このことは今や喫緊の国民的課題となっています。

こうした目的を実現するため、山形大学医学部の医療政策学講座では、山形大学医学部附属病院において得られるデータの分析はもとより、山形県内全ての一般病院を対象とした病院調査等を実施することにより、県内の医療資源の配置や患者・疾患分布等の実態を的確に把握し、さらには全国レベルでの関連統計の解析を行うなど、客観的なエビデンスに基づいた政策研究を展開しています。特に、県内の病院調査等による継続的なデータの集積と分析は、全国でも先進的と言える山形大学蔵王協議会等の活動を通じて、県の地域医療体制にも反映され、医療資源の適正配置の実現に貢献しています。

また、平成21年10月に嘉山孝正医学部長(当時、現国立がん研究センター理事長)が厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)の委員に就任されて以降は、現在も中医協における診療報酬改定の議論に常時参画しており、医療政策を決める場で実践的な取り組みを進めています。現在の診療報酬点数においては、医療における「モノ」と「技術」の評価が分離しておらず、長年にわたる微調整の結果、原価計算などの積算根拠が不明確であり、技術料も適切に評価されていません。こうした状況が医療現場に大きな歪みをもたらしていることから、診療報酬の評価体系の抜本的な見直しについて提言するなどしています。

医学部においてこのような形で医療政策学の研究と実践に取り組んでいる大学は他に例がなく、山形大学の大きな特色です。これまでの我が国の医療政策は客観的な根拠もないままに決められることが多々ありましたが、現場のエビデンスに基づく研究成果を山形から全国に向けて発信していくことにより、良質な医療体制の構築を目指して努力しています。