山形大学医学部
腎泌尿器外科学講座
〒990−9585
山形市飯田西2−2−2
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1.泌尿器科悪性腫瘍

腎細胞がんや膀胱がんの増殖に関わる分子の働きを調べ、診断・治療に応用するための研究に取り組んでいます。

腎細胞がん

4cm以下の小さな腎細胞がんに対する治療成績は、腎部分切除術でも腎全摘術でも同等であることが証明されていますが、腎部分切除術の方がより腎機能を残すことができます。当科では腎機能保持を目的として、腎部分切除術を積極的に行っています。腎部分切除術が適応とならないような比較的大きな腫瘍の場合は、根治的腎摘除術も腹腔鏡下に行っており、約7cmの皮膚切開と数か所の5-12mmの皮膚切開で手術可能です。転移のある進行腎がんに対しては、従来からのインターフェロンαやインターロイキン2を用いた免疫療法に加え、分子標的薬、さらに最近では新たながん免疫療法として注目されている抗PD-1(ピーディーワン)抗体による積極的に行なっています。当院ではいずれの治療法に関しても日本でも有数の治療経験数を持ち、特に分子標的薬やがん免疫療法に関しては医師、看護師、薬剤師等の各専門分野のスタッフによるチーム医療を行い、副作用対策に務め、安全に治療が行える体制を整えています。

腎盂・尿管がん

腎盂・尿管がんに対しては腎臓、尿管をすべて取り除く腎尿管全摘術が標準術式です。当院では多くのの症例で腹腔鏡下に行っています。従来の開腹手術では側腹部から下腹部にかけて30cmの皮膚切開が必要でしたが、下腹部の約7cmの目立たない傷で済むことがほとんどです。リンパ節転移の可能性がある場合には腎尿管全摘術に加えて、リンパ節を十分に切除して根治性(完全に治す)を高めるようにしています。現在はリンパ節郭清術も鏡視下で行っています。

膀胱がん

表在性(早期)のがんについては、低侵襲の経尿道的内視鏡的切除をおこなっています(皮膚は切らないで済みます)。浸潤性(進行)がん(筋層にがんが浸潤している)に対しては、手術による根治性(完全に治すこと)を重視して、術前化学療法(M-VAC、M-VEC)を行い、その後に膀胱全摘除術を施行することもあります。尿路変向術(膀胱摘出後の尿路再建)には、回腸を利用した回腸導管造設術や尿管を直接皮膚に固定する尿管皮膚瘻造設術、回腸を利用した自然排尿型代用膀胱造設術などがあり、症例ごとに最も適切な術式を選んで施行しています。

前立腺がん

より確実な診断(見逃しを少なくする)のために、超音波ガイド下で経直腸的16ヵ所生検(通常は10ヵ所生検)を行っています。その際にはしっかりと麻酔(仙骨ブロック)をすることで、できるだけ痛みの少ない検査を行っています。手術では手術支援ロボット"ダ・ヴィンチ"を用いて、精度が高く安全性の高い手術を行っています。緑内障や腹部手術の既往があり、ロボット手術の適応にならない場合には、創の小さな小切開手術を行っています。また、放射線療法の適応のある患者さんには放射線科と協力して強度変調放射線治療(IMRT)という周囲正常組織への影響が少なく副作用の少ない治療も行っています。

精巣腫瘍

青壮年に好発し、最初の治療が非常に大切ながんです。きちんとした病期診断の後に抗がん剤による化学療法、手術療法、ときに放射線療法を組み合わせて、完全治癒を図っています。難治性の症例には新しい抗がん剤を用いた化学療法や自己末梢血幹細胞移植を併用した高用量化学療法を治療戦略に組み入れています。

副腎腫瘍

副腎は左右の腎臓の上に位置する約2〜3cmの三角形の臓器で、人が生きるために必要なホルモンを分泌するとても大切な臓器です。副腎にできる腫瘍には@ホルモンを産生する良性腫瘍、Aホルモンを産生しない良性腫瘍、B悪性腫瘍などがあります。@の場合、副腎からのホルモンが過剰になることで、高血圧や高脂血症、糖尿病などの様々な病気が二次的に引き起こされるようになります。これらは薬などである程度治療することもできますが、充分に改善されない場合は手術の適応になります。従来は小さな腫瘍でも15〜20cmほど腹部を切開して手術を行なっていましたが、最近では腹腔鏡手術が標準治療となりました。腹腔鏡手術は開腹手術に比べて創が小さく術後の回復が早いというメリットがあります。当科では副腎腫瘍の診断、内分泌管理(術前術後)、治療(開腹手術、腹腔鏡手術など)を含めて習熟したスタッフが多く、ほとんどの症例で腹腔鏡手術により治療しています。

腎部分切除術

通常、腎がんに対しては癌のできた腎臓を周囲脂肪組織と一緒に全部摘出する根治的腎摘出術が行われます。しかし、腫瘍が小さく(≦4cm)外側に突出する場合には腫瘍を周囲の正常腎組織をつけて切除して、腎臓の機能を温存する腎部分切除術が行われます。腫瘍の位置や大きさによって、腹腔鏡手術(4-6か所に5mm-12mmの切開)または開放手術(側腹部の約15cmの切開)のいずれかを選択します。2016年12月からは、手術支援ロボット"ダ・ヴィンチ"を用いた腎部分切除術を開始しました。従来の腹腔鏡手術と比べてより正確な腫瘍の切除と腎機能の温存が可能です。ロボット支援腎部分切除術では、翌日から歩行や食事が可能で約半数の患者さんは術後5日目に退院できます。

自排尿型代用膀胱造設術

浸潤性膀胱癌に対しては腫瘍を膀胱ごと全部取りきる膀胱全摘術が行われますが、その場合、尿を体外に出すための尿路変更術が必要となります。そのうち自排尿型代用膀胱造設術(ネオブラダー)は、回腸を40cmほど切り取って膀胱の代わりとなる袋を作り、尿道と吻合するものです。回腸導管造設術に比べて手術時間は長くなりますが、ストーマ管理を必要とせず、尿道から自然な形での排尿が可能になります。この手術法は浸潤性膀胱癌があり、@膀胱の出口や尿道に癌がない、A腎機能が正常、B腸管に問題がない、C高齢でない、D全身合併症による危険が少ない方が適応になります。手術の直後は新膀胱の容量が小さいために尿失禁や逆流による腎盂腎炎をきたす割合が高くなりますが、習慣的排尿や骨盤底筋群のトレーニングにより時間とともに容量は増大し失禁の頻度も減少します。また逆に十分に排尿しきれずに残尿が残り、自己導尿が必要になる方もいます。その他、腸閉塞や膀胱と尿管・尿道の吻合部からの尿の漏れ、吻合部が狭くなり尿が出にくくなるなどの合併症が起こることがあります。

手術支援ロボット“ダ・ヴィンチ”

根治的前立腺摘除術と腎部分切除術では手術支援ロボット"ダ・ヴィンチ"を導入して手術を行なっています。根治的前立腺摘除術には、開腹術と腹腔鏡手術があります。腹腔鏡手術の方が、体に対する侵襲が少ないのですが、通常の腹腔鏡手術の鉗子は先端が曲ず、動かせる方向に制限があるため手術の難易度が高いという欠点がありました。手術支援ロボット"ダ・ヴィンチ"システムは、腹腔鏡手術の利点を生かしつつ、腹腔鏡手術の難点を克服しました。"ダ・ヴィンチ"の鉗子には関節があり、人間の手以上に動かすことができるため、自由な角度で容易に切除や縫合ができます。加えて、3次元(3D)で高解像度の画像と手ぶれ補正機能による精細かつ正確な手術が可能となりました。前立腺癌の手術においては、神経や血管を温存するための繊細な操作が可能となり、術後早期の排尿機能や性機能が改善されました。腎部分切除術では、@腫瘍の完全切除、A腎の阻血時間の短縮、B合併症なしのすべてを達成できる割合が格段に改善されました。このように従来の手術に比べ、精度と安全性の高い手術が可能なため、患者さんの早期の回復・退院や社会復帰が可能となりました。

2.腎移植

腎移植は慢性腎不全に対する唯一の根治療法です。慢性腎不全に陥った後でも腎移植をうけることで、健常者と遜色のない生活をとりもどせることが期待できます。

当教室は山形県内唯一の腎移植認定施設として、生体腎移植および献腎移植を施行しています。生体腎移植については、これまでハイリスクと考えられていた血液型不適合腎移植、非血縁間(おもに夫婦間)腎移植、二次移植、糖尿病患者に対する腎移植などに対しても積極的に取り組んでいます。また生体腎移植では、腹腔鏡を用い提供者からの腎摘出術をおこなうことで、提供者の負担を軽減しています。

3.排尿障害

薬物療法、手術療法のみならず、行動療法を含め患者さんにやさしい治療法を提案します。

前立腺肥大症

前立腺は男性の膀胱の下部に存在するクルミ大(正常では約15g)の臓器で、精液の一部を作る男性生殖器官の一つです。前立腺の中心を尿道が貫いており、前立腺が腫大すると尿道が圧迫変形し尿の勢いが悪くなります。また、排尿困難以外に

  • 頻尿(尿が近い)
  • 尿意切迫感(急に、尿意をもよおしもれそうで我慢できない
  • 夜間頻尿(夜寝てから頻回に排尿する)
  • 残尿感(排尿後、まだ尿が残っている感じがする

などの症状も出現します。最悪の場合には尿が全く出なくなってしまいます(これを尿閉と呼びます)。

前立腺肥大症の治療法は、大きく薬物療法と手術療法、それ以外の治療法に分けられます。薬物療法は、前立腺の尿道への圧迫を緩めるα1ブロッカーやPDE5(ホスホジエステラーゼ5)阻害剤、腫大した前立腺を縮小させるアンチアンドロゲン薬と5α還元酵素阻害薬、植物製剤、漢方薬等があります。また尿意切迫感を伴う場合には、抗コリン薬が用いられることがあります。手術療法には、下腹部を切開する方法(開腹手術)、尿道から内視鏡を挿入して前立腺を切除する方法(TUR-P)、レーザー照射により前立腺腺腫を凝固壊死あるいは蒸散させる方法(HoLAP,PVPなど)と、レーザーを用いて前立腺を摘出する方法(HoLEP)などがあります。その他合併症や全身状態から手術療法が困難な患者さんに対する低侵襲治療(体に負担の少ない治療)として、尿道内に形状記憶合金で出来たステントを留置する治療や、1日に数回患者さん自身で尿道内に管を入れて尿を出す間歇的自己導尿、尿道カテーテルを留置し定期的に交換する方法等があります。

神経因性膀胱

神経因性膀胱は排尿を調節する大脳、脊髄、末梢神経の障害によって膀胱機能に異常をきたす病気です。頻尿、尿意切迫感、切迫性尿失禁などの症状を伴う過活動膀胱のタイプと、尿意が減弱して(尿がたまったかわからない)、排尿困難などの症状を伴う低活動膀胱のタイプがあります。

低活動膀胱に対しては薬物療法のほかに患者さん自身で1日数回導尿する間欠的自己導尿指導を行います。 間欠的自己導尿法ができない場合には尿道カテーテルを留置しますが、尿路感染の可能性があります。 その他、手術療法として小児の二分脊椎症例に対して膀胱拡大術(膀胱の容量を大きくする手術)を行うことがあります。

腹圧性尿失禁

女性の尿失禁には大きく分けて、せき、くしゃみ、笑う、走るなどの動作で、腹圧がかかると少しずつ尿がもれてしまう腹圧性尿失禁と、尿意を感じてからトイレに行くまで間に合わずにもらしてしまうタイプの切迫性尿失禁の2つのタイプがあります。腹圧性尿失禁の治療は、膀胱や尿道を支える骨盤底筋群を鍛える骨盤底筋訓練を行い、改善の思わしくない場合に手術療法を行います。骨盤底筋訓練は、当院外来看護師が指導致します。腹圧性尿失禁に対する手術としてメッシュを用いて尿道を吊り上げ支えるTVT手術やTOT手術があります。

男性の腹圧性尿失禁に対して、平成24年より人工括約筋植え込み術が健康保険適応となりました。人工括約筋は尿道の周りにシリコン製のチューブを巻き付けることにより尿道を圧迫することで尿失禁を治療するものです。前立腺切除術に伴う腹圧性尿失禁や尿道または膀胱頸部が開いてしまう(内因性尿道括約筋不全(ISD))が原因で起こる尿失禁の治療に用いられます。

4.女性泌尿器科

QOL(生活の質)を考え、排泄機能の維持、改善に努める治療を提案します。

骨盤臓器脱

骨盤の中にある膀胱、子宮、直腸などの臓器は、骨盤の底にある筋肉や筋膜、じん帯など「骨盤底筋群」により支えられ、こうした組織が加齢や出産などでゆるんで骨盤内臓器の位置が下にずれ、骨盤内臓器が下に下がって腟の中に落ち込み、ちょうど腟を裏返すような感じで外に脱出するのが、骨盤臓器脱です。会陰部に何か触れる、歩行時や排便時などに不快感があるといった症状が多く、排尿障害、排便障害、尿失禁を伴うことも多い疾患です。骨盤臓器脱があっても、腟の中程まで臓器が落ち込んでいる程度で、とくに症状がなければ治療を行う必要はありませんが、尿もれなどの症状があれば治療が必要です。基本的にはペッサリーの装着か手術かを選ぶことになります。ペッサリーによる治療法は、腟の中にリング状やドーナツ型のペッサリーを挿入し、下から子宮を支えて位置を矯正する方法です。これは、当院産婦人科に依頼して行っています。ペッサリーによる治療でも症状の改善が思わしくない場合は、従来は、膀胱や子宮の周りの組織を強く縫い合わせて補強する手術方法(膣壁縫縮術)がとられていました。しかし、再発率が高いため、最近ではメッシュにより子宮脱や膀胱脱の位置を戻して補強する膣壁形成術が行われるようになって来ました。この手術をTVM(Tension-free Vaginal Mesh)手術と呼び、当院でも平成20年2月より行っております。メッシュを用いた膣壁形成術は、術後の痛みや体への負担が少なく再発率も低い(約10%)手術方法です。 当科では、当院産婦人科、第一外科と協力し患者さんの病状に合わせた治療法を選択しております。

間質性膀胱炎

間質性膀胱炎(interstitial cystitis; IC)は、頻尿と膀胱痛を主な症状とする慢性進行性疾患で、原因は明確ではないものの、膀胱粘膜の透過性の亢進、知覚神経の刺激が膀胱の知覚過敏を引き起こし、次第に膀胱壁の伸びやすさが低下することで起こると考えられています。症状は頻尿と尿がたまった時の膀胱部や尿道口などの痛みで、刺すような痛みや歩いても響く強い痛みから、違和感や重苦しさまで、症状はさまざまです。30代以降の女性に多く、アレルギー性疾患や尿路感染症の病歴がしばしばみられます。難治性の頻尿の場合に、間質性膀胱炎の可能性があります。膀胱痛は、あまりははっきりしないことがあります。診断では、膀胱容量がどれくらい小さくなっているかがひとつの判断材料になります。水圧拡張(麻酔下で膀胱を一定の内圧まで水で拡張し、水を抜いた時に特徴的な膀胱粘膜の点状出血、五月雨状出血、亀裂が起きるかをみる)は、診断として重要なだけでなく治療効果も期待できます。内服薬での治療や、膀胱内薬剤注入療法も行います。