指導教育方針

■ 研究指導方針(Education)
 当教室に大学院生として所属してくる諸君には,臨床を経験することを要望する.臨床における診断,治療,予後の追跡の諸過程は,疫学研究におけるエンド・ポイントを決める重要な過程であるのでそれをまず身をもって体験して欲しい.また,その体験は,患者をこのような目に合わせた疾患の成因は何かとか,どうすればこのような目に合わなくてすむか,といった疫学的あるいは予防医学的発想をうむ恰好の機会となるであろう.この機会をつかまえて自発的に研究テーマを決めて欲しい.この研究テーマは漠然としていてはいけない.関連研究論文のレビュー,目的,対象および方法,予想される結果,研究の倫理的問題などについてきちんと記された研究計画書を作成することが要求され,それをもとに指導教官とディスカッションがなされるであろう.関連研究論文のレビューは初心者の諸君にとっては大変苦痛な作業に違いない.馴染みのない疫学の用語や難しい統計手法に辟易するかも知れない.疫学および統計学の系統的なセミナーを行なうことを考えているが,たぶんそれだけでは身につかず,結局論文のレビューをしながらそのつど教科書にあたることを繰り返すことで身についていくと考えられる.この段階で,論文を批判的に読む姿勢,いわゆるcritical reviewの方法について指導する.また,このレビューにより,時間と予算を考えて自分が選んだテーマに適した対象,方法の選択が決められる.疫学研究の対象者としては,病院の患者,施設の入居者ばかりでなく,地域住民が選ばれることもある.その研究の価値(と,諸君の情熱)が十分であると判断した場合は,責任を持って研究のフィールドを確保することを約束する.
 公衆衛生学を選ぶ動機として「自分はコンピュータが好きだから」という諸君は,当教室では単なる便利屋としてこき使われるのが落ちであることを覚悟しておいて欲しい.確かに疫学においては,コンピュータの依存度が他の分野に比べて大きいが,その位置付けは,実験医学の測定機器程度のものであり,それが得意なことは本質的でないことを知るべきである.