研究内容とこれまでの主な研究成果

 1 神経細胞の分化の過程におけるERK5の役割について

 Mitogen-activated protein kinase (MAPK) ファミリーに属する extracellular signal-regulated kinase 5 (ERK5) は、nerve growth factor (NGF) や epidermal growth factor (EGF) などの代表的な神経栄養因子や増殖因子によりその活性が顕著に上昇します。しかし、同じ MAPK ファミリーに属する ERK1/2 と比較して、ERK5 に関する研究は著しく遅れているのが現状です。

 私たちは、未分化神経細胞のモデル細胞である PC12 細胞や上頸神経節由来の交感神経細胞を NGF で刺激すると、ERK5 が活性化されて、神経突起(軸索)が伸展することを明らかにしてきました。さらに、PC12 細胞、交感神経細胞、ヒト正常副腎髄質では、神経伝達物質/ホルモンであるカテコラミン類の生合成について、ERK5 は ERK1/2 以上に重要な役割を担うことが明らかになりました(J. Biol. Chem. 2009; Cell Signal. 2016)。


図:PC12細胞に空ベクターまたはERK5 kinase-dead (KD) 変異体をGFPともにトランスフェクションした。NGFで細胞を1日刺激した後、細胞の形態を観察した。ERK5KDの過剰発現により、NGFによるPC12細胞の分化が抑制された。(青)細胞の核をヘキスト染色した。(緑)GFP陽性細胞。*J. Biol Chem 2009を改変

 

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主な発表論文Achievements.html

図:推定されるシグナル伝達図。NGF刺激によって、低分子量Gタンパク質のRasやRap1を介さずにERK5は活性化される。活性化されたERK5は神経突起の伸展を引き起こすとともに、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)の発現量を増大し、カテコラミン類の生合成を促進していることが予想される。*Cell Signal 2016を改変

2. パーキンソン病の新規原因遺伝子midnolin (MIDN) の生理的・病理的な役割について

図:PC12細胞に発現するMIDNをゲノム編集(左)またはRNA干渉(右)で抑制した結果、Parkinとその発現を制御する転写因子ATF4の発現が大きく減少した。*Sci Rep 2017を改変
 
図:推定されるシグナル伝達図。NGFやcAMP刺激により、MIDNが発現される。MIDNは神経突起の伸展を引き起こすとともに、ATF4を介したParkinの発現を促進し、ユビキチン化を介したタンパク質の品質管理を担っている。MIDNの発現が低下すると上記の機能が抑制され、細胞内に不良タンパク質が蓄積し、パーキンソン病発症の原因になると予想される。*Sci Rep 2017を改変
 

 ERK5 によって誘導される遺伝子群の中で、その機能が全く不明だった遺伝子 MIDN に関して、内科学第三講座(神経内科)の加藤先生やゲノムコホートユニットの佐藤先生のご協力のもと、この遺伝子がパーキンソン病の新しい原因遺伝子であることが分子疫学的な解析からわかりました。実に孤発性パーキンソン病患者の 10.5% に MIDN 遺伝子の欠落が認められ、健常者では異常がありませんでした。

 そのメカニズムを調べたところ、MIDN の発現をゲノム編集・RNA干渉などで抑制すると、PC12 細胞の分化が完全に抑制されるとともに、Parkin E3 ユビキチンリガーゼの発現も抑制されました(Sci. Rep. 2017)。Parkin は有名なパーキンソン病の原因遺伝子の一つであり、Parkin の機能が抑制されると、正しい高次構造を保てない不良タンパク質のユビキンチン化・分解が起こらず、その不良タンパク質の蓄積が病気の発症の原因と考えられています。

 現在は、MIDN が発現を制御する遺伝子群のトランスクリプトーム解析をおこなっています。その結果、MIDN は Parkin 以外にも複数のパーキンソン病の原因遺伝子の発現に関与していることがわかりました。

さらに、MIDN ノックアウトマウスを作製して、in vivo における解析を行っていく予定です(準備中)。

*遺伝子改変動物や多くの臨床検体を用いて、ERK5やMIDNの生理的・病理的な役割について解明していくことが大きな目標です。

○ERK5/MIDNに関する主な出版論文


1.Midnolin is a novel regulator of parkin expression and is associated with Parkinson’s Disease. SCIENTIFIC REPORTS 7:885(2017)


2.Expression of extracellular signal-regulated kinase 5 and ankyrin repeat domain 1 in composite pheochromocytoma and ganglioneuroblastoma detected incidentally in the adult adrenal gland: a case report.  Intern. Med. (2016) 55, 3611-3621.


3. ERK5 induces ankrd1 for catecholamine biosynthesis and homeostasis in adrenal medullary cells.  Cell. Signal. (2016) 28, 177-189.


4. Phosphorylation of ERK5 on Thr732 is associated with ERK5 nuclear localization and ERK5-dependent transcription.  PLoS ONE (2015), 10, e0117914.


5. ようやく見えて来た神経系におけるERK5の機能(総説)。日本薬理学雑誌 (2013) 141, 251-255.


6. Basic fibroblast growth factor promotes glial cell-derived neurotrophic factor gene expression mediated by activation of ERK5 in rat C6 glioma cells.  Cell. Signal. (2011) 23, 666-672.


7.The signaling pathway leading to ERK5 activation via G-proteins and ERK5-dependent neurotrophic effects (Review).  Mol. Pharmacol. (2010) 77, 10-16.


8.ERK5 activity is required for NGF-induced neurite outgrowth and stabilization of tyrosine hydroxylase in PC12 cells.  J. Biol. Chem. (2009) 284, 23564-23573.


9.βγ subunits of Gi/o suppress EGF-induced ERK5 phosphorylation, whereas ERK1/2 phosphorylation is enhanced.  Cell. Signal. (2008) 20, 1275-1283.