ごあいさつ

山下 英俊

地域医療から世界へ最先端の眼科医療を

山形大学眼科学  山下 英俊

医療に限らず現在の社会が激動の最中にあることは皆さんの共通の認識であると考えます。あらゆる価値観がチャレンジを受けています。「山形大学医学部の眼科学教室の存在意義は何でしょうか?」という基本的な問題をわれわれは考えなければなりません。それは「良い眼科医がそだっている環境をととのえること」です。「良い眼科医」は定義はそれぞれのかたである程度異なっているかもしれませんが、「高い倫理観をもって患者に接して、高い技術をもって病気と戦い、新しい治療を自らの意思と能力で開発していく眼科医」です。

これからは組織に頼って自らのキャリアーを伸ばしていくという生き方はおそらくかなりリスクが高いと考えています。どんな組織でも完璧なものはなく、またその構成員にとっていつまでも快適であるという保障はありません。どんな状況でも、しかし、良い眼科医は世の中で不必要になることはありません。世の中から切望される良い眼科医が育っていく礎とすることにより、個々の眼科医局員がどんな状況でも生き抜いていき、生きがいにみちた眼科医の人生がおくれるようにしたいというのが山形大学医学部眼科学教室の存在意義があると考えています。
具体的には以下のように考えて

  1. 初期(スーパーローテート期間をのぞくと眼科のトレーニングが2年間)、後期の研修での眼科基礎医療技術習得のはっきりとした目標を設定します。
  2. 眼科学のあらゆる専門分野を経験できるように眼科の研修期間での専門領域診療グループのローテートするようにします。
  3. 最新の眼科医療、眼科医科学になるべく早く接触し、おおきな高い目標を設定して自らの眼科医としてのステップアップの道筋を自ら考えるようにする機会ももてもらう。国際学会、日本の全国学会に初期研修期間からなるべく出席してもらうようにします。
  4. 大学病院の病院機能として高度先進医療の開発がある。若いうちからそのプロセスに参加する機会を設ける。先進生命科学を臨床現場に根付かせるためには臨床経験も大切であるが、新しい発想がもっと重要です。若い人の現場からのセンスは大変大きな示唆に富んでいることを私は日常、いつも感じております。
  5. 若い医師の大学病院と一般病院の間での人事の交流を意識して行います。良い臨床医になるためには双方での臨床経験は不可欠です。大学病院では高度先進医療に接するとともに、多くの良質の指導者(大学内にかぎらず大学以外の指導者も含む)に直に指導を受けられます。そして、一般病院では自分の責任で自分の頭で考えた診療をしなければならず、各自の臨床経験をつむこと、臨床能力の自己評価、今後の自らの専門分野の選定をすることができます。これを2つとも経験して、若い医師が育っていく礎ができたと考えます。

大学医局の主な役割はこれまでです。それから先は、各自が自分の道を選んで自立していくことになります。大学医局にのこって教育、研究をしながら臨床医として自らを高めていくこと、育った医局とはべつの組織で武者修行を行うこと、大学院に進んで基礎研究に従事することなどなど、いろいろな道があるでしょう。山大眼科教室はもちろんこのようなさらに進んだステップでも最大限のサポートをします。しかし、この過程でもっとも大切なことは各医師がみずから研修期間で養った高いモラル、モチベーションをもっているということです。それをもって、的外れな努力をしなければかならず良い眼科医として大成します。そして、こうなったらどこでどのようなことをするかは自ら決することができます。これがタイトルに掲げた「自己責任の時代の自立した眼科医」です。仲間をつくり、良い指導者をみつけて自らの意思で自らをいつも高めていく眼科医です。

山大の眼科は上記のようなシステムで眼科医を育てつつ、高度先進医療の開発を目指しています。そして、それだけが医局のありかたではありません。医局の存在価値はおなじように厳しい時代を生き抜いていく同学の人たちが助け合い、いい人間関係を築いていけるような楽しい雰囲気が大切であると考えています。患者さんへの倫理観は本質的には患者さんへのやさしさが基本です。しかし、そのやさしさを形にしなければ意味がありません。これは上記の研修システムに含まれているのですが、個人的な経験からしても良い先輩から直に学ぶものであると考えています。そして、これは先輩との人間関係から学ぶことが大きいと考えます。先輩が後輩をかばいつつ育てていく雰囲気は研修プログラムをつくることでできるものではありません。以上は努力することで必ずしもできるわけではありませんが、幸いにして現在は山大眼科医局は(自画自賛かもしれませんが)たのしくて、若い人が元気に自分の目標にむかって向上している医局となっていると考えています。眼科学に興味のあるかたは是非声をかけてください。

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