top page>>脳脊髄減少症とは?

低髄液圧症候群と脳脊髄液減少症

【病気の概念】

低髄液圧症候群は、脳脊髄液の漏出によって起立時の牽引性頭痛を主症状とする症候群である。低髄液圧による頭痛は、1988年の国際頭痛分類(初版)にも、すでに記載されていることからもわかるように、けっして新しい疾患概念ではなく、半世紀以上も前に、当時、中枢神経系の診断法として唯一の方法であった腰椎穿刺後に発生しやすいことが知られていた。

その後、腰椎穿刺以外の脊椎脊髄外傷後、更には原因が特定できず”特発性”とされる症例(1)の存在も報告されるようになった。また、最近では髄液圧が正常ながら、典型的な低髄液圧症候群の症状を持つ症例がある事が報告され(2)、このような症例も含めて「低髄液圧症候群」にかわって「脳脊髄液減少症候群」という用語も使われている。


【病態生理】

頭蓋内腔の構成要素は、80%が脳実質、10%が血管、10%が髄液腔で、成人の髄液量は140ml程度とされている。これらは硬膜、くも膜という膜につつまれ存在している。髄液は、脳室内の脈絡叢で一日に約500ml産生され、脳脊髄の表面を還流後、頭蓋円蓋部のくも膜顆粒より吸収され、バランスを保っている。髄液圧は、側臥位では頭蓋内、腰椎レベルともに10~15cmH2O前後であるが、立位になると、腰椎レベルでは40cm H2O程度まで上昇し、逆に頭蓋内は陰圧になることもある。

髄液腔を包む硬膜、くも膜に何らかの理由で穴があき、髄液が漏れると、内部の水と供に脳が動き、痛覚受容体のある脳神経、脳の血管や頭蓋底の硬膜が刺激され、痛みを感じる。すなわち低髄液圧症候群の頭痛は「牽引性頭痛」に分類されている。低髄液圧症候群の最も中核的症状である「起立性頭痛」は、立位になることにより、髄液が多く存在する頭蓋が、髄液の漏出部位より相対的位置が高くなり、髄液の漏出量が増えるためと考えられている。頭痛の発生機序としては、この他、静脈の拡張や髄液減少によるアデノシン受容体の活性化が関与するとの考えもある。


【原 因】

最も有名で、かつ歴史も古いのが腰椎穿刺後の髄液漏出である。髄液検査時や脊髄麻酔時には、現在でも穿刺針の工夫などの予防策がとられてはいるが、現在でもしばしば経験する。その他の理由としては、硬膜損傷をともなう脊髄・脊椎外傷や nerve sleeveのcyst、くも膜嚢胞、髄膜瘤などの奇形に伴うものも報告されている。原因不明すなわち特発性の低髄液圧症候群は、1938年にSchaltenbrand(1)によりはじめて報告されている。

先にも述べたように、本症候群が近年関心を浴びているのは、本症候群といわゆる鞭打ち症を含む外傷性頸部症候群との関連が取沙汰されていることにある。本症候群と外傷性頸部症候群に関しては、2000年頃より、平塚共済病院(当時)の篠永正道らにより「頸椎捻挫に続発した低髄液圧症候群」と題する学会報告が行われたことに端を発している。頸椎捻挫と本症候群の関連については、海外でも詳細な検討はなされておらず、その関連は今後の検討課題である。

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