第51回SSC学術報告

Factor XIII小委員会 幹事:一瀬 白帝

 

 日時:2005年 8月 7日(日) 8:30 〜 13:00

 場所:The Ballroom 1、Sydney Convention Center

 

 Chairman: R. A. S. Ariens (UK)

 Co-Chairmen: A. Ichinose (Japan) , P. Bishop (USA), H. Kohler (Switzerland), R. Seitz (Germany)

 Active member: L. Muszbek (Hungary), M. Maurer (USA), I. Ivaskevicius (Germany)

 

 今回は、2名の副委員長の一人であるBishop博士とActive memberの米国のMaurer博士は欠席であったが、他の副委員長やActive memberは皆出席しており、約80-100名の参加者が会場に列席していた。

 

 現在、XIII因子小委員会がSSCの承認を得ようとしている項目は、

1) XIII因子欠損症の国際登録

2) XIII因子の名称

 の2つであり、小委員会で進行中の活動は、

1) 第一次国際XIII因子標準血漿の抗原測定

2) XIII因子濃縮製剤と組み換えXIII因子の標準物質の開発

 である。

 

1) トランスグルタミナーゼ関連疾患の概説 by Prof. Akitada Ichinose (Japan)

 ヒトゲノムには10種類のトランスグルタミナーゼ(Transglutaminase, TGase)遺伝子が存在し、多彩な疾患の発症、進展、修飾に関与している。XIII因子が関与している血栓症、心血管疾患、出血性疾患に加え、組織TGaseが関与しているハンチントン病をはじめとする神経疾患、腫瘍、セリアック病などの自己免疫疾患、角質細胞TGaseや表皮TGaseが関与する各種の皮膚疾患などである。少なくとも、XIII因子、角質細胞TGase、組織TGaseのKOマウスが創出され、欠損症の表現型が個体レベルで解析されるようになったので、それぞれの病態が詳細に知られるようになった。しかし、ヒトの欠損症と必ずしも一致しない症状、所見もあり、今後、各種の負荷試験を実施する必要がある。また、その中には種の違いによる表現型の相違も含まれているので、KO動物における病態解析と解釈には、充分な注意と慎重な考察が求められる。

 一瀬教授は、更に2002年2月にErfurt, Gemanyで発足したXIII因子標準化ワーキンググループ(FXIIISWG)の最近の活動の成果を紹介し、2004年夏に第一次国際XIII因子標準血漿を開発したこと、2004年後半これがSSCとWHOに承認されたことなどを公表した。

 

2)先天性XIII因子欠損症の登録計画 by Dr. Ivaskevicius (Germany)

 以前ヨーロッパでは、ドイツのSeitz博士やハンガリーのMuszbek教授が中心になってETRO (European Thrombosis Research Organization)の活動の一環として先天性XIII因子欠損症の登録事業を行って、1996年には72症例の臨床的データを集積し、一部の症例ではXIIIA遺伝子の解析を実施していた。ドイツのIvaskevicius博士はこの事業を引き継ぎ、2005年現在までに117例のデータを集積しているが、全世界では6,500-19,500名の先天性XIII因子欠損症例が存在すると推測される。このような登録事業を実施する目的は、先天性XIII因子欠損症例の治療、管理の上で重要な情報を提供するのみならず、XIII因子欠乏自体の浸透性を知り、XIII因子の遺伝子型/表現型関連や構造/機能関連を理解することである。詳細なデータのある42例中8例はXIII因子活性の低下が正常の約半分と軽度で、出血症状の発現との関係が興味深い。特に37才の女性はXIII因子活性が50%あるが、自然流産を繰返しており、遺伝子解析でXIIIB遺伝子のIle81Asn (T-A)変異が同定されている。これまでにデータが蓄積されたXIIIA遺伝子の欠陥は、50%がミスセンス変異、21%が小欠失、10%がイントロン/エクソンの変異、9%が小挿入変異である。先天性XIII因子欠損症例の登録事業は、XIII因子の基礎的、臨床的研究に貢献するものと期待されるので、より幅広い国際共同研究の必要性が議論された。

 

3)新しいXIII因子活性測定法の開発 by Dr. Rainer Seitz (Germany)

 ドイツのSeitz博士は、彼のグループが開発した、6つのHis残基を含むペプチドをビオチン化して、ストレプトアビジンでコートしたマイクロタイタ−プレート表面に結合させた方法を用いた新しいXIII因子活性測定法を紹介した。最初の方法では、検体中のXIII因子をトロンビンで活性化した後ヒルジンでトロンビンを不活性化して、CaCl2を加え、架橋結合した基質ペプチドを含む高分子蛋白質分画を硫安で沈澱させ、ペレットを8M Ureaで一晩溶解して、結合したペプチドの蛍光を測定していた。改良した方法では、ストレプトアビジンでコートしたマイクロタイタ−プレートにBiotin-His6-Gln15-Arg5選別ペプチドを結合させ、蛍光ラベルした検出ペプチドGly-Gln-His-His-Leu-Gly-Gly-Lys-Gln-Val-Ar-Pro-Gluを、活性化XIII因子を含む検体と共に一定時間インキュベートした後EDTAを加えて架橋結合反応を停止させ、未反応の検出ペプチドをUreaで洗浄して除いた後、プレートに結合した検出ペプチドの蛍光を測定する。基質濃度と蛍光強度、活性化XIII因子量即ち検体中のXIII因子量と架橋結合したペプチド量の直線性は良いが、血漿を検体した場合希釈しないと却って架橋結合したペプチド量が減少するので、血漿蛋白質による干渉が問題である。これは使用している検出ペプチドの親和性が低い為であるので、多くの異なるアミノ酸配列を持った検出ペプチドをデザインしてスクリーニングして、より良いものを作製する予定であるという。

 

4)XIII因子濃縮製剤におけるXIII因子活性の測定について by Prof. Laszlo Muszbek (Hungary)

 XIII因子標準化の次ぎの目標は、XIII因子濃縮製剤であるが、XIII因子活性の測定法の違いによって値が異なることが問題である。緩衝液、XIII因子欠乏血漿、XIII因子除去Fibrinogen製剤の何れかを用いて2種類のXIII因子濃縮製剤I, IIを希釈してXIII因子活性を測定すると、特に緩衝液で希釈した時に、測定に用いた2種類の方法のどちらかによって約2倍の活性値の違いが出たという。2つの測定方法で異なるところは、用いるトロンビン濃度が20 u/mlと4.5 u/ml,、Fibrin重合阻害薬がGPRPとGPRPA、基質がalpha2-plasmin inhibitorのN末ペプチドとbeta-Casein、DTT濃度が0.1 mMと0 mM、血漿ブランク有りと無し、という点である。XIII因子欠乏血漿、XIII因子除去Fibrinogen製剤で希釈すると、活性値の違いは認められないので、FibrinがXIII因子活性化の補因子として働いている可能性が高い。ただし、加えるトロンビンの量を増やしても充分には改善しない。従って、XIII因子欠乏血漿、XIII因子除去Fibrinogen製剤を希釈に用いて正確で再現性のある測定法とするのが適当であるが、前者は高価であり市販されているのは明らかに完全欠損ではない血漿であるので、測定に用いるのは不適切である。従って、抗体カラムなどを用いてXIII因子をほぼ完全に除去したFibrinogen製剤を作成して2 mg/ml程度に加えて用いるのが、より現実的であり、将来の標準化の共同研究に採用することが提案された。

 

5)XIII因子の命名法について by Prof. Laszlo Muszbek (Hungary)

 血漿XIII因子はaサブユニット2量体とbサブユニット2量体からなる異種4量体であるが、幾つかの細胞内ではaサブユニット2量体単独で存在する。また、トロンビンによる活性化に際してはN末の活性化ペプチドが切断された活性型aサブユニット2量体からbサブユニット2量体が遊離するが、高塩濃度あるいは高濃度のカルシュウム存在下ではから活性化ペプチドが切断されないまま活性型酵素として働く。これらのXIII因子の名称は論文によって異なり、これまで混乱があった。そこで、1997年のFlorenceにおけるISTH SSCのXIII因子小委員会で、新しい命名法の原案が提唱され、血栓止血分野の研究者の間で試験的に用いてみることとなった経緯がある。その後かなり多くの研究者が共通の名称を使うようになったが、まだまだ不統一である。そこで、ハンガリーのMuszbek教授が再度命名の統一を提案し(図は省略。下の表を参照のこと)、小委員会に出席した研究者によって満場一致で承認された。この命名法をSSCで承認して貰った後、XIII因子小委員会を代表して短報としてJ. Thrombosis and Hemsostasis誌に掲載されるように提出することになった。

 

TERMINOLOGY TO DESIGNATE DIFFERENT FORMS OF BLOOD COAGULATION FACTOR XIII

 

Factor XIII normally present in the plasma (tetramer; A2B2):

Recommended term:

Plasma coagulation factor XIII (Plasma factor XIII)

Not recommended terms:

Fibrin stabilizing factor, Plasma protransglutaminase,

Fibrinoligase, Fibrinase, Laki-Lorand factor, Plasma transamidase.

 

Factor XIII of intracellular localization present in platelets, megakaryocytes, monocytes, macrophages (dimer; A2):

Recommended term:

Cellular coagulation factor XIII, (Cellular factor XIII).

Not recommended terms:

Platelet, monocyte, placenta, etc. factor XIII,

Cellular protransglutaminase.

 

PROPOSED FXIII TERMINOLOGY AND

ABBREVIATIONS I.

Blood coagulation factor XIII: FXIII

Plasma factor XIII (A2B2): pFXIII

Cellular factor XIII (A2): cFXIII

Recombinant factor XIII (A2): rFXIII

 

Potentially active FXIII subunit:

recommended term: A subunit of factor XIII (FXIII-A) not recommended terms: factor XIII a or a subunit, (FXIIIa, FXIIIa, FXIII a, FXIII a, FXIII-a, FXIII-a)

 

Inhibitory/carrier FXIII subunit:

recommended term: B subunit of factor XIII (FXIII-B) not recommended terms: factor XIII b, b or S subunit, (FXIIIb, FXIIIb, FXIIIS, FXIII b, FXIII b, FXIII S, FXIII-b, FXIII-b, FXIII-S)

 

 

6)XIII因子標準化ワーキンググループの予備的共同研究報告 by Dr. Sanj Raut (United Kingdom)

 NIBSCのRaut博士は、初代XIII因子標準血漿におけるXIII因子抗原量の測定についての予備的国際共同研究の結果を報告した。2003-2004年におけるXIII因子標準化ワーキンググループ(FXIIISWG、代表Prof. Ichinose)により初代XIII因子標準血漿が開発された際に、既にそのXIII因子抗原量の測定も実施されており、活性0.91 Uに対して抗原0.93 U(CV=14.8%)という値が得られていた。しかし、国際共同研究に参加した10の研究グループによって測定方法が大きく異なり、標準値として採用されるには至らなかった。特に、サンドウィッチELISA法では、用いられた抗体が、抗aサブユニット/抗aサブユニット、抗aサブユニット/抗a2b24量体、抗bサブユニット/抗aサブユニットのペアとまちまちであり、抗a2b24量体抗体を用いたLaurell法も含まれていた。何れにせよ、血漿中ではXIII因子はa2b24量体として存在して酵素活性を保持しているので、XIII因子抗原量測定の標準物質としてはXIII因子a2b24量体を採用するべきであると結論された。本年夏に実施されたパイロットスタディでは、5つの研究施設が同じa2b24量体ELISAキットを用いてNIBSCで開発されたプロトコールで測定を行った。得られた抗原量は0.89 Uと、上述したように種々の方法で得られた値にほぼ一致しており、範囲は0.75-1.10 U、CV=1.8%とかなり近似していた。FXIIISWGは、より完全な分析を待ってデータが確認されれば、今迄の研究結果を合わせて、初代XIII因子標準血漿のXIII因子抗原量として設定する予定である。その後、SSCとWHOによるXIII因子抗原量の値の承認を要請することになる。

 なお、FXIIISWGは2種類のXIII因子濃縮製剤におけるXIII因子抗原量を測定しており、40倍希釈でそれぞれ0.97 U と1.04 Uという値を得ている。範囲はそれぞれ0.93 ミ 1.10、0.90 ミ 1.11 U、CV=2.6、4.1%と良好な結果であった。

 

7)XIII因子の多型性が反応速度論的に測定される酵素活性に与える影響 by Dr. Robert Ariens (United Kingdom)

 PentylamineがFibrinに取り込まれる反応速度を決定することを原理とするXIII因子活性の測定方法は、酵素の活性化速度の違いを敏感に反映するので、白人の25%に認められる一般的な遺伝的多型性であるVal34-Leuでは野生型Val34と異なる活性を示すことになる。Ariens博士は、Pentylamineを用いた従来の反応速度論的なXIII因子活性測定法に修正を加えて、最大活性化後の総酵素活性を測定することを試みた。主な変更点は、検体のインキュベーション時間を15分間から60分に延長したこと(30分では吸光度の増加が少なく、120分ではリニアな範囲が狭いため60分を選んだ)、時間経過に伴う450nmでの吸光度の増加速度ではなく血漿の希釈度に対する吸光度の投与量ム反応曲線で決定したことである。改良した測定法は、ngオーダーのXIII因子を測定可能な程鋭敏であり、血漿、精製XIII因子、組み換えXIII因子蛋白質、臨床的に使用されているXIII因子濃縮製剤の投与量ム反応曲線が平行関係にあることで示されるように、高い特異性があるという。同じようなXIII因子a2b24量体濃度を持ったVal34型のホモ、Leu34型のホモ、両者のヘテロ接合体の検体は同一の投与量ム反応曲線を示した。従って、検体中の活性化可能なXIII因子の総量を測定したい場合には、このend-pointアッセイを反応速度アッセイの代りに使用することが提案された。

 

(報告者;一瀬)


第50回SSC学術報告

Joint Subcommittee on Factor XIII/Fibrinogen

幹事:一瀬 白帝

 

 日時:2004年 6月17日(木) 14:00 〜 18:20

 場所:サン・ジョルジョ・マジョレ財団会議場 Cipressi Room

 

 Chairman: R. A. S. Ariens (UK) (Factor XIII), N. Weinstock (Germany) (Fibrinogen)

 Co-Chairmen: A. Ichinose (Japan) (Factor XIII), P. Bishop (USA) (Factor XIII), J. Koopman (The Nertherlands) (Fibrinogen), S. Lord (USA) (Fibrinogen)

 Active member: L. Muszbek (Hungary) (Factor XIII), C. S. Greenburg (USA) (Factor XIII), L. Muszbek (Hungary) (Factor XIII), R. Seitz (Germany) (Factor XIII)

 

小委員会の合同開催について

 今回は、弱体化したFibrinogen 小委員会を支援すること、FibrinogenはXIII因子の主な生理的基質の一つであり最も関連が深いこと、国際血栓止血学会との併催でない年はFactor XIII 小委員会も参加者が少ないので合同にしてもディスカッションの時間を確保できると予想されることなどを理由に、試験的に合同開催されることとなった。ところが、実際に参加したXIII因子小委員会の常連的メンバーは約40名で、Fibrinogen側のメンバーに至っては昨年Birminghamで合同開催を打診してきたFibrinogen 小委員会副委員長(元委員長代行)のSuzan Lord教授さえ欠席で約10名程が参加したに過ぎなかった。Active memberがいないことも原因の一つであり、Fibrinogen分野のmajor playersをリクルートするWeinstock委員長の努力と工夫が必要であると思われる。なお、Factor XIII側の2名の副委員長の一人であるBishop博士とActive memberの米国のGreenberg教授は欠席であった。

 結果的には、Factor XIII側の議題/演題が7つであったのに対して、Fibrinogen側のそれは2件に過ぎず、ディスカッションも殆どがFactor XIII関連の問題についてなされた。Fibrinogen関連の演題2件に時間を使ったため、討論の時間が不充分であったこと、Fibrinogen側の演題の一つは疾患との関連についての論文をレビューしたに過ぎなかったことから、合同開催の是非について再検討が必要であると考える。

 

XIII因子の標準化について

 この問題については、XIII因子標準化ワーキンググループ(FXIIISWG)の代表を務めるIchinose教授とメンバーであるSeitz博士が、2004年2月25日にHamburg (Germany)における第48回GTHでFactor XIII Workshopを開催し、約40名の参加者を得て、以下のトピックスについて討論した。

1) A. Ichinose (Yamagata Univ., Japan): Transglutaminase gene family and factor XIII

2) R. Seitz (PEI, Langen, Germany): Clinical implications of human factor XIII

3) L. Muszbek (Debrecen Univ., Hungary): Biochemical properties of factor XIII and its measurements

4) T. Barrowcliffe (NIBSC, Potters Bar, UK): Principles in the standardization of coagulation factors

5) S. Raut (NIBSC, Potters Bar, UK): Protocol for Factor XIII standardization

6) Discussion

 また、同日、Ichinose教授、Muszbek教授、Seitz博士、Barrowcliffe教授の4名のFXIIISWGメンバーに実務担当者のRaut博士を加えた5名で、第3回会議を開催し、XIII因子標準物質制定の為の国際共同研究の実施方針とスケジュールを決定した。

 

 

I. XIII因子測定

凝固因子と阻害物質の標準化;一般的原則 by Prof. Trevor Barrowcliffe (UK)

 英国National Institute for Biological Standards and Control(NIBSC)のBarrowcliffe教授は、これまで多くの凝固因子と阻害物質の標準化に関与してきたので、その一般的原則について解説した。先ず、1mlの血漿に含まれる凝固因子やインヒビターの量を1国際単位と定義する。標準化は幾つかの過程からなる;即ち、標準物質として適当な素材の予備的な研究、試験的な製剤、安定性試験、大規模に作られた製剤、国際共同研究、SSC/ISTHからのWHOに対する最終報告書の各段階である。一旦、標準物質がWHOに承認されれば、同一の標準物質の長期的使用、類似物質による置換、正常血漿や以前の標準物質に対する照合確認によって保証されることが望ましい。標準物質の保管/在庫可能期間は、VIII因子では5年間で、安定性を確認することが重要である。安定性試験は、処理過程を促進して期間を短縮するために低温のみならず常温より高い温度でも実施されるが、高温による劣化試験は安定性を過剰評価する可能性があるので注意が必要である。安定性試験は、1つ以上の研究室で実施されることが望ましい。標準化において重要なポイントは似ているもの同士を比べることである。例えば、血漿中XIII因子濃度を測定する場合は標準血漿を使用するべきである。凝固因子活性において、2段法や合成基質発色法などのように測定の方法の違いは、施設間のデータの不一致の原因になることがある。基準的な測定法を定めることは通常難しいが、少なくともプロトコールに注意書きとして明記するとよい。

 

XIII因子測定の標準化のための国際共同研究の報告 by Dr. Sanj Raut (UK)

 XIII因子測定の標準化のための国際共同研究の結果を報告した。既に昨年、上述したFXIIISWGの予備実験のデータを発表しており、検体を希釈する時に緩衝液の代わりにXIII因子欠乏血漿を用いると、活性測定法の間で結果が一致し易いことが示されていた。大規模に製造された製剤を用いた国際共同研究への参加が募集され、成功裡に完了した。使用された製剤は、検体XはXIII濃縮製剤;検体Yは国際XIII標準血漿候補;検体AはNIBSCのプール正常血漿ロット2;検体BはNIBSCのプール正常血漿ロット3。XIII因子欠損血漿も試薬として共同研究に参加した施設に配付された。参加した25施設の内、23施設が活性、10施設が抗原量の測定結果を回答した。それぞれの施設のローカル正常血漿と標準血漿候補Y のXIII因子量と偏差が評価され、後者は0.93 U/ml, 施設間変動係数11.6%とXIII因子活性測定結果については良く一致していた。抗原量の測定結果は、0.83 U/ml, 施設間変動係数33.4%と変動がより大きかったが、多くの施設のデータは似通っていた。XIII濃縮製剤の結果は測定方法の違いにより44.3 vs. 54.5U/ml施設間変動係数23%とかなりの不一致があり、更なる検討が必要であろう。(その後)詳しい報告書はXIII因子小委員会の委員長/副委員長、アクティブメンバーに送られ、SSCに提出する前にフィードバックと承認を得ることになった。

 

 (なお、第4回FXIIISWG会議を2005年2月にマンハイムで行われる統合血栓止血学会GTHで、XIII因子シンポジウムとして開催することになっている。)

 

XIII濃縮製剤と組織充填/接着剤におけるXIII因子測定 by Dr. Laszlo Muszbek (Hungary)

 XIII因子の活性化は、測定系にFibrinogenが存在するとフィブリンに変換されて著しく促進される。また、活性型XIII因子はフィブリンに取り込まれる。従って、XIII因子活性が多量体化したフィブリンの存在下で測定されるのか、それとも非存在下であるのか、考慮する必要がある。検体を緩衝液で希釈するのか、XIII因子欠乏血漿を用いるのかによって、測定系のFibrinogen濃度、ひいてはXIII因子の活性化を変化させることになる。測定系にクエン酸緩衝液ではなくFibrinogenが存在することによって、血漿中のXIII因子活性は最適な状態で測定できる。その上、クエン酸緩衝液ではなくXIII因子欠乏血漿で希釈することによって、XIII因子がより安定化される。例えば、あるXIII濃縮製剤をクエン酸緩衝液で希釈すると16 U/ml、 XIII因子欠乏血漿では22.4U/mlという活性値が得られたが、ELISAでは29.9 vs. 30.8 U/mlと差が無い。

 市販のフィブリン接着剤、BeriplastとTissuecolを20ム40倍に希釈したところ、0.98、1.18 U/mlとほぼ生理的濃度のXIII因子が検出された。

 

Flow CytometryによるAMoL細胞におけるXIII因子発現の評価 by Dr. Janos Kappelmayer (Hungary)

 Flow Cytometryによって、M5 白血病のリンパ球はCD14とXIII因子Aサブユニットについて強陽性に検出/染色された。また、細胞培養実験では時間と共にXIII因子Aサブユニットの発現はCD14のそれと正に相関して増加した。XIII因子Aサブユニットの発現レベルは、MOからMO-2へと有意に増加し、M4で最も強く染色された。細胞上でのXIII因子Aサブユニットの発現はMO, M4, M5, CMML, 血小板, M7の順に増加していた。従って、XIII因子Aサブユニットは単球系の造血分化における早期のマーカーであると結論された。

 

 

II. XIII因子欠損症の治療法の開発

XIII因子のノックアウトマウスの研究 by Dr. Akitada Ichinose (Japan)

 トランスグルタミネーション(transglutamination)は主要な蛋白質の翻訳後修飾反応の一つである。ヒトゲノムには、XIII因子の他に9つのトランスグルタミナーゼ遺伝子が存在し、神経疾患から出血/血栓性疾患、癌、肝臓疾患などに至るまで、トランスグルタミナーゼの機能異常が関与している多くの疾患が知られている。動物モデルにおいて生体内でのXIII因子の機能/役割を明らかにするために、XIIIA及びXIIIB遺伝子をそれぞれ遺伝子標的して、ノックアウト(KO)マウスを創出した。XIIIB遺伝子のKOマウスは、エクソン1と2を遺伝子標的した。ウェスタンブロッティングによって、XIII因子Bサブユニットが血漿中に存在しないことが確認された。BサブユニットはAサブユニットのキャリアーであるが、若干のAサブユニットがXIIIBKOマウスの血漿中に循環している。XIIIBKOマウスには明らかな病的な形質は認められなかった。出血を誘発させるchallengeを加えない限り、外見的には正常であると考えられた。これに一致して、ヒトのXIIIB欠損症はXIIIA欠損症よりも通常軽症である。

一方、XIIIAKOマウスは、ウェスタンブロッティングで血漿中にAサブユニットが全く存在しないことが確認され、出血時間の延長が見られた。雄XIIIAKOマウスは、出血により野生型よりも生存期間が短縮する傾向があった。雌XIIIAKOマウスは、交配すると妊娠はするが、その多くが自然流産を起こしたり膣からの大量出血により死亡した。病理形態学的な解析によると、胎盤出血や子宮内胎児死亡が認められ、自然流産は着床など他の段階でも欠陥に基づくものではなく、胎盤出血が原因であることが判明した。これらのマウスの症状は、ヒトのXIII因子欠損症の女性患者の自然流産を想起させるものである。

XIII因子欠損症では、創傷治癒の異常が見られるので、XIIIAKOマウスで皮膚の創傷を作成してその治癒過程を観察したところ、野生型に比べて明らかな治癒の遅延と潰瘍の形成が認められた。

これらのXIII因子KOマウスはヒトXIII因子欠損症の良いモデルとなり、生体におけるXIII因子の生理的病理的機能を理解することに貢献することができるものと期待される。

 

組み換えXIII因子Aサブユニットの生化学的生理学的解析 by Dr. Ken Lewis (USA)

 酵母で産生した組み換えXIIIA製剤は50 U/kg までの静脈内注入では安全で副作用が見られず、1.77 % U/kgの血中濃度増加が得られた。1日5回注入して、投与量と半減期、Bサブユニットの血中濃度との関係が評価された。薬理学的動態解析では、Bサブユニット欠損症では著しく半減期が短縮していた。健常人では、組み換えXIIIA製剤注入に対する、全Aサブユニット、A2B2複合体、Bサブユニットのレベルに違いが認められた。ゲルろ過による解析によると、組み換えXIIIAは、Bサブユニットに対して正常な親和性を持ち、自発的かつ迅速にA2B2複合体になる。活性値は、A2B2複合体レベルよりも増加し、Bサブユニットが飽和されるものと思われる。A2の半減期は30時間、A2B2複合体は8.5日、Bサブユニットは16.7時間である。結局、組み換えXIIIA製剤は、臨床前解析、生化学的解析から期待される通りにふるまうことが確認された。

 Dr. Lewisらは、超遠心、電気泳動、狭角散乱解析の結果から、Bサブユニットは単量体として存在することを提唱した。これまでのコンセンサスと異なる仮説であり、今後の確認が必要である。

 

 

III. Fibrinogenとトロンビンの相互作用

トロンビンとFibrinogenE領域の相互作用 by Dr. Leonid Medved(USA)

 ヒルの酵素hementin で切断して作製したFibrinogenE領域とトロンビンとの複合体についてX線結晶構造解析を行った。HementinはFibrinopeptide A & Bが無傷に保たれたFibrinogenE領域断片を作る。X線結晶によって、FibrinogenE領域の両方の対側にトロンビンが1分子ずつ結合した構造が、3.6Åの分解能で決定された。トロンビンは、そのExosite Iを介してFibrinogenE領域と相互作用する。トロンビンExosite Iの構造とhementinによるFibrinogenE領域の構造を重ね合わせると、Exosite Iは一部だけが結合に関与していることが分かった。FibrinogenE領域に対するトロンビンExosite Iの向きを考慮すると、酵素活性部位はFibrinogen分子の側面に位置し、Fibrinopeptideから少し離れていることになる。Fibrinopeptide A が第一段階で切断されると2本鎖プロトフィブリル繊維が生成し、第2段階でFibrinopeptide Bが切断されると側々結合ができて繊維束が生成すると考えられている。そこで、Fibrinopeptide Aが先にトロンビンで切断されることを説明するためのモデルが提唱された。Fibrinopeptide Aはトロンビンの活性部まで伸長しているのに対して、Fibrinopeptide Bはよりランダムな配置をしているというものである。そして、Fibrinopeptide Aが先にトロンビンで切断された後に、Fibrinopeptide Bもトロンビンの活性部に配置する構造をとる。Molecular Modelingがこの理論を支持するために用いられ、分子構造の変化が計算によって作成されたアニメによって示された。

 

 

IV. Fibrinogenの臨床的意義

動脈硬化性血栓症におけるFibrinogenの役割 by Dr. Gordon Lowe(UK)

 動脈硬化性血栓症と血中Fibrinogen濃度が密接に関連していることについては確証がある。しかし、Fibrinogenが疾患の原因であるかどうか、Fibrinogen濃度を低下させれば疾患の危険を減少させることができるかどうかが、残された問題である。Fibrinogenは、肝臓で産生され、IL-6に反応する急性期蛋白質の一つである。Fibrinogenは、フィブリン血栓の形成、フィブリンの構造機能、血小板凝集、細胞接着、赤血球凝集などに関与しており、血漿の粘度を決定する。恐らく、Fibrinogen自体に加え、血漿粘度が疾患と一番有意に関連しているものと思われる。Fibrinogenと血漿粘度は頸動脈内中膜肥厚、間欠性跛行との関連が報告されている。後者では、bezafibrateが14%程度Fibrinogen濃度を低下させるとともに、コレステロール、赤血球凝集を減少させ、歩行距離を改善するという。Fibrinogen濃度と大腿動脈の狭窄度も比例する。運動は、Fibrinogen濃度を低下させ、血漿粘度を変化させるとことが示されている。血漿Fibrinogen濃度の増加のみならず、酸化や他の翻訳後修飾によるFibrinogenの構造機能の変化が血管障害と関連していることを示す証拠もある。Fibrinogen濃度は、他のよく知られた危険因子を調整した後でも、心筋梗塞や脳卒中の危険を有意に変化させる。ただし、遺伝子発現を変化させる遺伝的多型性と疾患の危険性との関連は一貫性がない。Fibrinogen濃度と血管病が有意に関連していること、更なる研究が必要ではあるがこの関連には因果関係があることなどが結論された。しかし、Fibrinogen濃度を低下する薬剤が臨床的に試されてはいるが、効果が不明であり、現在血管病の治療薬として選択に入っていないので、Fibrinogen濃度の測定は臨床的に有用とは言えない。

 

XIII因子測定の臨床的妥当性 by Dr. Hans Kohler

 XIII因子の測定方法には数種類あり、それらの内の幾つかはXIII因子活性の定義が異なる。NEQAS研究で、幾つかの施設でのXIII因子測定方法によってはXIII因子欠損症の分類が間違っている率が高いことが報告されており、明らかに標準化が必要であることを示している。XIII因子のそれぞれのサブユニットをELISAを用いて測定することによって、より正確なXIII因子欠損症の分類ができる。もう一つの問題は、Val34Leu遺伝子多型に対する活性測定法の反応性の違いである。XIII因子による低分子アミンの取り込み量を測定する方法とNADHを用いたアンモニアの生成量を測定する方法の間では、活性値の相関が悪いが、Val34Leu遺伝子多型に従って分類して比較すると、相関は改善する。ちなみに彼等のデータでは、Val/Val; 0.92, Val/Leu; 1.04, Leu/Leu; 1.34U/mlである。トロンビンによる活性化段階はVal34Leuに影響を受けるので、これに感受性のある測定方法は、活性測定前に完全に活性化されるようにプロトコールを改善するべきである。

  肺梗塞では、血栓/塞栓による閉塞度が高い程、症例の血中XIII因子濃度が低い。これは、XIII因子の消費によるものと思われる。特に、XIII因子レベルの低い先天性XIII因子欠損症では、診断のみならず製剤投与後のコントロールの上で、XIII因子活性測定に注意が必要である。架橋結合反応において遊離するアンモニアの量を測定することが原理である方法では、血漿による基礎的NADH酸化量があるので(所謂げた)、これを補正するためのブランクを導入することが必要である。

 

 今回のXIII因子とFibrinogenの合同小委員会では、測定方法やその他の問題について活発な討論がなされた後、午後6時15分に閉会された。

 

(報告者;一瀬)


第49回SSC学術報告

Subcommittee on Factor XIII

幹事:一瀬 白帝

 

 日時:2003年 7月12日(土) 9:00 〜 13:00

 場所:バーミンガム国際会議場 ホール9

 

 Chairman: R. A. S. Ariens (UK)

 Co-Chairmen: A. Ichinose (Japan), P. Bishop (USA)

 Active member: L. Muszbek (Hungary), C. S. Greenburg (USA)

 

 今回も国際血栓止血学会との併催であったので、ほとんど全てのXIII因子小委員会のメンバーが学会本体に参加しており、この小委員会への参加者は約130名であった。また、2名の副委員長である報告者のIchinose教授とBishop博士の2名も小委員会に参加したが、Active memberの米国のGreenberg教授は欠席であった。SSCの小委員会は、基本的に標準化や種々の問題を解決するという実務が目的であるから、なるべく実際に会議に参加できるメンバーを運営担当者に選任すベきであると考える。そうすることによって、XIII因子に関する重要な問題を継続的に共に討論できるからである。前委員長である私の責任でもあるが、約10年前の設立以来Active memberの人数が少ないこともこの小委員会の欠点であり、今後より積極的にこの分野のmajor playersをリクルートすべきであろう。

 

 さて、今回の小委員会では、主に遺伝子標的、原子間力顕微鏡、部位特異的遺伝子改変などのトピックスに加え、Ichinose教授 (Japan)が推進しているXIII因子の国際標準物質についても討論された。また、以下のようにXIII因子小委員会のあり方についても新しい提案がなされ、翌日主要な関係者の会議でも継続して討議された。

 

1)XIII因子小委員会の運営その他について

Fibrinogen小委員会との統合問題by Dr. Ariens

 2001年パリのXIII因子小委員会でXIII因子の標準化について討議した時に、Fibrinogen小委員会の副委員長であるMacIntosh博士が発言して「Fibrinogen製剤のXIII因子測定や機能的XIII因子活性測定についての希望」を出した。その後2002年ボストンのSSCでXIII因子小委員会とFibrinogen小委員会の連携が提案され、今回は新委員長のAriens博士がそれを支持する説明をして、この件につき参加者の意見を求めた。Fibrinogen小委員会の新しい委員長代行Lord教授が賛成意見を述べたが、大方の意見は反対であった。

 (なお、事前にこの件について打診があったので、前委員長のIchinose教授は「XIII因子とFibrinogenは酵素と基質という密接な関係にあるので、必要に応じて両小委員会が連携し、合同小委員会を開催すること。ISTHと併催の年は小委員会への出席者が多いが、SSC単独開催の年は半分以下なので、実験的にSSC単独開催である2004年を合同小委員会にすること」を、2003年5月にこれまでXIII因子小委員会を担ってきた主要なメンバーに提案していた。しかし、XIII因子小委員会は毎回多くの議題や発表があって、時間内に終了するのに苦心しているので、更にFibrinogen問題を加えることは望ましくない、XIII因子固有の問題は独自に検討したいというのが多くのメンバーの本音であった。)

 結局、上述したように今回のXIII因子小委員会では反対意見が多かったのであるが、参加者達の意向を確認する為に統合問題についての無記名投票をすることになり、翌日開票と善後策討議のために、新委員長のAriens博士、副委員長のIchinose教授、Active memberのMuszbek教授、Fibrinogen小委員会の委員長代行Lord教授の4名が会合を開いた。先ず、開票の結果(括弧内の数字はFibrinogen小委員会からの11票を加算した最終投票数59のもの)、統合反対30(34)票、賛成16(21)票、中立2(4)票で、基本的には統合しないこととなった。ただし、2004年ベニスでのSSC で2つの小委員会を実験的に合同で開催することを検討することで合意したので、現在その方向で調整中である。

 

Peter Steinert教授への謝辞と黙祷by A. Ichinose

 長年transglutaminaseの研究に貢献してきたPeter Steinert教授が本年3月突然の事故で急逝されたので、親交のあったIchinose教授が彼の遺影を映写し、業績を紹介した後、参加者全員で黙祷を捧げた。2001年パリでは、XIII因子を含むtransglutaminaseの研究に歴史的なmilestoneを残したAriel Loewy教授の御逝去に伴って、同様に黙祷を捧げており、次第にこの分野の著名な研究者が去って行かれるのは実に寂しい限りである。

 

 

2) XIII因子研究における最近の科学的進歩

マウスのXIII因子の遺伝子標的 by A. Ichinose, S. Koseki-Kuno, M. Souri, N. Takeda, G. Dickneite

日本の一瀬教授のグループは、これまでXIII因子欠損症患者のゲノムDNAにおいて多数のAサブユニット(XIIIA)及びBサブユニット(XIIIB)遺伝子の突然変異を同定してきた。XIIIA遺伝子の突然変異は特にホットスポットは無く、ほとんど全てのエクソンに分布しており、変異の種類にも一定の傾向はない。XIIIB遺伝子の突然変異は今迄に世界で報告されている5症例全てを解析した結果、4種類の変異を同定している。試験管内でXIIIA及びXIIIB遺伝子の変異蛋白質を発現させた実験を行って欠損の分子機構を解明してきたが、そのようなアプローチでは、本疾患の生体内での臨床的な病態のメカニズムを完全に理解することはできない。そこで、本疾患のモデル動物を作製して生体内でのXIII因子の役割を明らかにするために、XIIIA及びXIIIB遺伝子のノックアウトマウスを創出した。一般的な外観上、XIIIA及びXIIIB KOのホモ接合体もヘテロ接合体も野生型マウスと比べて明らかな違いは認められなかった。XIIIA KOは、尾を切った時の出血時間が野生型よりも延長する傾向があったが、更に血小板数や形態に異常は無いので、血小板機能や血管の検索が必要である。

XIIIA KO雌に関しては、XIIIA KOホモ接合体の雌雄を交配したところ、全ての雌マウスが妊娠はするが、その多くが自然流産を起こしたり膣からの大量出血により死亡した。病理形態学的な解析によると、胎盤出血や子宮内胎児死亡が認められ、自然流産は胎盤出血が原因であることが判明した。これらのマウスの症状は、ヒトのXIII因子欠損症の女性患者の自然流産を想起させるものである。

これらのXIII因子ノックアウトマウスの更なる解析により、生体におけるXIII因子の生理的病理的機能を理解することに貢献することができるものと期待される。

 

血管病におけるXIII因子の役割 by Kohler

 スイスのKohler博士は、以前新生児の心臓手術に合併する急性毛細血管漏出症候群がXIII因子の低下と関連しているという報告をしており、血管透過性として表現される内皮細胞の防護機能をXIII因子が制御していると提唱している。今回は特にXIIIAの血栓塞栓症における役割についての見解を述べるとともに、冠血管内の血液検体におけるXIII因子濃度の測定結果を示した。彼のデータによると、特に急性期にはXIIIA濃度が低下しているが、XIIIB濃度には変化が無い。急性心筋梗塞急性期の生存率もXIIIA濃度低下例で悪いこと、プロトロンビンのFr 1+2濃度と逆相関していることから、血栓形成に際してトロンビンの活性化に続いてXIIIAが活性化されて消費性の低下し、活性型XIII因子によって血栓が強固になるために溶解が起き難く、死亡率が高くなると説明している。

 肺梗塞の症例においても、肺動脈の閉塞率とXIIIA濃度は逆相関しており、大きな血管に大きな血栓が存在する程(消費により)XIIIA濃度が低下している。ただし、XIIIB濃度には変化が無い。

 このようにXIII因子と血管病に関連があることは、XIII因子の活性、XIIIA、XIIIB濃度を測定する方法の標準化が重要であることを示唆している。

 

活性型XIII因子による架橋結合のフィブリンの構造/機能に対する影響 by Weisel

 米国のWeisel 博士は、a-polymerization siteを含むa鎖のC末端を欠如した組み換え蛋白質Fibrinogen Aa251を作製して、活性型XIII因子による架橋結合反応の詳細について検討した。XIII因子は、AサブユニットのVal34-Leu多型性の影響を避ける為に、プールされた血漿から精製され、完全に活性化されたものが使用されている。先ずFibrinogen Aa251は、正常のものと比較して繊維間孔のサイズがより小さく、より細いファイバーを持ったクロットを生じ、ファイバーの分岐点は正常の約2倍に増加していた。活性型XIII因子を加えると、全体的なフィブリンの構造には大きな変化は無いが、クロットの硬さには劇的な違いがあった。即ち、Fibrinogen Aa251からできた架橋結合フィブリンは、正常に比べて硬さが約半分とかなり低く、可塑性に富んでいた。また、プロトフィブリル間の非弾性滑りも正常より多かった。このように、a鎖のC末端ドメインのa-polymerizationは、フィブリンの硬さに寄与していることが分かった。このFibrinogen Aa251は、正常と同じようにg-dimerizationをするが、活性型XIII因子存在下でクロットを作った時には非存在下にできたものより約2倍硬いので、g-dimerizationもまたフィブリンの硬度に貢献していることが分かった。

 Weisel 博士は共焦点レーザー顕微鏡でプラスミンによるフィブリン溶解の様子を観察して、Fibrinogen Aa251からできたフィブリンは、活性型XIII因子存在下でも非存在下でも、正常に比べて約2倍早く溶解したと述べている。従って、a-polymerizationはフィブリンの構造のみならず機能にも影響を与えると結論された。

 

XIII因子の活性化反応におけるXIII因子/トロンビン相互作用の解析 by Maurer

 米国のMaurer 博士は、多数の合成したXIII因子活性化ペプチドを用いてトロンビンとの相互作用を解析した。2D NOESY spectra、MALDI-TOF、Pulsed Alkylation Mass Spectrometryなどの解析方法を用いて、野生型とN末端から29、34、39番目のアミノ酸Val残基をPheやLeuで置換したり、トロンビンによるArg37-Gly38活性化切断部位の3アミノ酸残基上流にあたるP4をVal34からIle、Ala、Phe残基に置換したりして、kcatとKmを比較したところ、Val34からLeuへの置換は両方のパラメーターを大幅に改善した。IleとAlaへの置換ではKmが改善したが、kcatは逆に悪化した。なお、KmはIle34が、kcatはLeu34がベストであった。このように、XIII因子AサブユニットのVal34-Leu多型性の部位であるP4のアミノ酸残基はトロンビンとの相互作用に重要な役割を果たしており、XIII因子の活性化反応を左右している。

 Maurer 博士は今後、トロンビンとの結合によりXIII因子自体に起きる構造変化について更に深く理解する為に、活性化ペプチドだけではなくXIII因子分子全体を用いて同様の実験を繰り返すという。

 

XIII因子の活性化反応におけるXIII因子/トロンビン相互作用の解析 by Philippou

 英国のPhilippou 博士は、XIII因子の活性化反応におけるXIII因子/トロンビン相互作用を、上とは逆にトロンビンの側から解析した。彼は、トロンビン分子の表面に露出している78個のアミノ酸残基を置換させた55種類の変異体を用いて、ペンチルアミンのカゼイン、Fibrinogen、フィブリンへの取り込みで活性化反応の効率の良し悪しをスクリーニングし、HPLCで活性化ペプチドの遊離量を測定して反応速度論的な解析を行った。先ず、Arg78/Arg180/Asp183、Trp50、Glu229、Arg233残基は何れもXIII因子の活性化反応において、XIII因子との相互作用に直接関与していることが分かった。これは、Val34-Leu多型性の如何には関係ない。この直接相互作用部位は、プロテインCやアンチトロンビンとのそれと共通であるという。次ぎにPhilippou 博士は、トロンビンのHis66、Tyr71、Asn74残基は、フィブリンへの結合部位であり、フィブリンのXIII因子の活性化反応促進作用に関与していることを示した。これらの所見をまとめると、トロンビンは多くの基質を持っているが、複数の補因子の間での競合によってどの基質とより良く反応するかが決定される。XIII因子の活性化反応においても、トロンビン分子上の重なる部位に結合するフィブリンとトロンボモジュリンの間での競合で、活性化の程度が左右される。即ち、トロンビンとフィブリンが結合することによって構造が変化し、より効率良くXIII因子の活性化が促進されることになる。

 

原子間力顕微鏡によるFibrinogen/フィブリンとXIII因子の構造解析 by Lim

 英国のLim 博士は、原子間力顕微鏡を用いて10-30 nmの解像度でリアルタイムでFibrinogen/フィブリンとXIII因子の立体構造を解析した。Fibrinogen分子の長さは約45 nmで、3つの節様部分からなっている。XIII因子異種4量体とAサブユニット2量体は、約15年前にロータリーシャドウ分子が電子顕微鏡で示された構造とほぼ同様であったが、Bサブユニットのそれは伸展性や可塑性の所為か、明確な像が得られていない。XIII因子非存在下のフィブリンの構造は、トロンビン添加後3分で2重鎖となり、捩れがあるが、分岐は少ない。6分後にはフィブリン繊維はより長く、太くなっている。活性型XIII因子存在下では、トロンビン添加後3分でオリゴマーが優占し、早くも多数の分岐が存在する。反応液の濁度を測定すると、活性型XIII因子存在下のほうが非存在下のフィブリンより濁度が低いので、g鎖が架橋結合により太い繊維が形成されていると考えられる。

 

3)XIII因子の臨床的研究

組み換えXIII因子Aサブユニット蛋白質製剤の安全性と薬理学的性状の解析 by Reynolds

 米国のReynolds博士は、組み換えXIII因子Aサブユニット蛋白質製剤の安全性と生体内での薬理学的動態について発表した。10名のボランティアの内8名は、肝腎機能異常が無い健常人で、2、5、10、25、50単位/kgの割合で各人に5回酵母で産生された組み換えXIII因子Aサブユニット蛋白質製剤が投与され、他2名にはプラセボが与えられた。なお、血中XIII因子濃度は、Berichrom assayで活性を測定してモニターされ、組み換え製剤の最大投与量は正常の200%になるように設定された。組み換え製剤の半減期は平均273時間(11日)で、血漿製剤のそれとほぼ同等であった。1単位/kgの投与量当たり血中XIII因子濃度が1.77%増加した。頭痛、筋肉痙攣、四肢の疼痛などの副作用の出現頻度は、プラセボグループ(n=10)と組み換え製剤グループ(n=40)の間で差が無く、安全性については問題が無いと考えられる。検査所見では、プロトロビン時間の延長は認めらず、D-dimerの増加も両グループ間で差が無かったが、組み換え製剤の投与量によってはELISAで測定した血中Bサブユニット濃度の一次的な増加と持続的な減少が認められた。AサブユニットがBサブユニットの安定化や生合成に影響を与えている可能性がある。

 

欧州共同研究グループのXIII因子欠損症に関する登録状況 by Ivaskevicius

 ドイツのIvaskevicius博士は、20ヶ国が参加している欧州共同研究グループのXIII因子欠乏を呈する症例の登録数が1996年72例、2000年96例、2003年には13例増えて109例に達したことを報告した。その内、49例はDenaturing HPLC(DHPLC)法でXIII因子遺伝子のPCR産物が異常の有無をスクリーニングされ、20種類のユニークな変異が発見されたという。その内IVS5-1のG-A変異は、英国、オランダ、ドイツ、ポーランド、ギリシャ、トルコで見つかっており、創始者効果である可能性がある。また、DHPLC法により検出された異常は、95%が遺伝子配列決定解析により特定されており、非常に鋭敏であることが示された。ただし、それらの変異が欠損の原因であるか否かは証明されていない。今後400対立遺伝子の解析を継続することにより、XIII因子遺伝子のSNPsや変異遺伝子の頻度を明らかにするという。

 

4)XIII因子の標準化問題

XIII因子の標準物質の追求 by Dr. Sanj Raut

 英国National Institute for Biological Standards and Control(国立生物学的標準物質監督施設?)のRaut博士は、Ichinose教授が代表を務めるXIII因子標準化ワーキンググループ(FXIIISWG)の予備実験のデータを発表した。これには、FXIIISWGのメンバーである、Ichinose教授、Muszbek教授、Seitz博士、Barrowcliffe教授の4つのグループが参加した。検体は2種類の濃縮XIII因子製剤と1種類の濃縮Fibrinogen製剤であり、測定方法はBerichrom assayとPentapharm assayの2種類であったが、大きな測定値の違いが認められた。この違いは、検体を測定系に加える時に用いる緩衝液をXIII因子欠乏血漿に代えると改善したので、測定系にFibrinogen/Fibrinが存在するとXIII因子の活性化が促進され、より安定した結果が得られるものと考えられる。また、測定方法の間でも活性値に違いが見られたが、これはBerichrom assayがXIII因子によるアンモニアの生成量を測定しているのに対し、Pentapharm assayはFibrinogenへのペンチルアミンの取り込み量を測定するという原理の違いに基づいている。Muszbek教授は、用いるトロンビンを増やすことによってFibrinogenのFibrinへの変換とXIII因子の活性化に充分な量にすると共に、Val34とLeu34の活性化速度の違いをキャンセルするようにと主張している。

 濃縮Fibrinogen製剤中のXIII因子の測定データにも違いがあったが、(恐らく上述した理由で)グループ間でのバラツキはより少なかった。

 (なお、本小委員会の2日後に第2回FXIIISWG会議を開催し、拡大FXIIISWGに少なくとも12非営利団体のグループをリクルートすること、先ず第一段階として標準血漿を確立すること、測定においては適当なXIII因子欠乏血漿の使用を推奨すること、第2段階では、参照用の濃縮XIII因子製剤、精製組み換えXIII因子タンパク質、濃縮Fibrinogen製剤、Fibrin糊などを対象に加えること、第3回FXIIISWG会議は2004年2月にハンブルグで開催することなどを決定した。その後、国際血栓止血学会ホームページに本共同研究への参加を呼び掛ける記事を掲載したり、個別に問い合わせたりしたところ、現時点で16グループが賛同しているので、第3回FXIIISWG会議に出席するように呼び掛ける予定である。また、この会議は統合血栓止血学会GTHのXIII因子シンポジウムとして開催して頂くことになっている。)

 

(報告者;一瀬)


第47回SSC

Subcommittee on Factor XIII

 

 日時:2001年 7月 7日(土) 9:00 〜 12:00

 場所:パリ大会議場 243号室

 

 Chairman: A. Ichinose (Japan)

 Co-Chairmen: L. Muszbek (Hungary), P.G. Board (Australia), C.S. Greenburg (USA), P. Bishop (USA)

 

予定議題

1)XIII因子のノックアウトマウス

2)XIII因子AサブユニットのVal34Leu型SNPの病理的意義

3)XIII因子活性測定の標準化

4)XIII因子の標準物質の作製

5)全体討論


第46回SSC

Subcommittee on Factor XIII

 

 日時:2000年 6月16日(日) 13:30 〜 17:30

 場所:マーストリヒト展示会議場 0.5号室

 

 Chairman: A. Ichinose (Japan)

 Co-Chairmen: L. Muszbek (Hungary), P.G. Board (Australia), C.S. Greenburg (USA), P. Bishop (USA)

 

 今回は国際血栓止血学会のoff yearにあたり、更に国際線溶学会と分離開催されたため、参加者が激減し、時間帯により 15〜25名であった。また、副委員長の内小委員会に参加し、発表したのはMuszbek教授のみであった。まず、新しい委員長のIchinose(Japan)氏が挨拶に立ち、旧委員長のMuszbek (Hungary)氏の3年間の貢献に対して謝辞を述べた。その後、以下の重要な事項について熱心な討論がなされた。

 

1)XIII因子Aサブユニット遺伝子発現の制御

 凝固第XIII因子(XIII)は活性部位を持つ2つのAサブユニット(XIIIA)及び2つのBサブユニットの異種4量体からなる血漿トランスグルタミナーゼである。Bサブユニットは肝臓で合成されるが、血漿中のXIIIAの合成部位については不明である。Ichinose (Japan)氏は、XIIIAの発現調節機構を明らかにするために、その転写調節領域と7種類のヒト癌細胞株を用いて以下の解析を行い、小委員会で解説した。XIIIAの5'上流領域約2.4kbの断片をCAT(クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ)ベクターに挿入して各種癌細胞を用いてCAT assayを行った結果、U937、HL60、MEGO1細胞で高い転写活性を認め、Hela、293細胞では転写活性を認めなかった。次に約10種類の欠失体(DNA断片)を作製して、それらの転写活性を調べたところ、U937より抽出したmRNAを用いて5'RACE(5'rapld amplification cDNA ends)法にて決定した転写開始部位(+1)を含む−119から+71にXIIIAの主要なプロモーターが存在することが示された。−295から−119の領域は単球系の細胞ではエンハンサーとして機能するのに対し、巨核球系ではサイレンサーとして機能することが示唆された。各種サイトカインのXIIIA5'上流プロモーター活性への影響を調べたところ、転写活性がU937ではPMA、ATRA、GM-CSFで誘導され、MEGO1においてはPMA、DMSO、TPOで誘導された。DNaseIフットプリント解析で陽性であった部位に転写因子のMZF-1のモチーフが存在することから、これがXIIIAの発現に重要な役割を果たしていると思われた。発現に関与するXIIIA遺伝子の転写エレメントは他のトランスグルタミナーゼのそれとはまったく異なり、このことが各トランスグルタミナーゼが様々な細胞で特異的に発現する理由であると結論された。

 次にIchinose氏は、転写開始点から-246塩基上流のG/A多型性について、血漿XIIIAの濃度とは無関係であったことを報告した。これは、英国のグループの結果とは異なるので、将来この小委員会で検討する必要がある。最後に、ヨーロッパ人に見られるVal34-Leu多型性は日本人の健常者にも虚血性心疾患の症例にも存在しないことを示した。従って、これは、白人に特有なfouder effectであると思われる。

 

2)XIII因子のScreening Testsの感度について:UK NEQAS調査より

 Jennings (UK)氏は、各種のXIII因子活性の測定方法が示す異なる感度について、160施設が参加した調査結果を報告した。この調査では、主に先天性XIII因子欠乏血漿、抑制物質による後天性XIII因子欠乏血漿、補充療法中のXIII因子欠乏血漿を用いて、Ca + Urea, Ca + Acetic acid, Ca + MCA, Ca/トロンビン + Urea, Ca/トロンビン+ Acetic acid, Ca/トロンビン + MCAによる血栓溶解を検査している。総括的に言うと、トロンビンを用いた検査はCa単独のものよりも鋭敏で、XIII因子の異常低値を見逃しにくい傾向があった。しかし、これらの方法で得られたXIII因子活性値には施設間で大きな差異があり、異常に低いレベルでも正常レベルの検体でも大きなバラツキが認められた。これらの結果は、XIII因子活性のルーチンな測定方法を標準化する必要があることを明らかに示している。

 そこで、この小委員会は、今後、推薦するに足る、異常XIII因子活性をscreeningする方法を探し求めることとした。

 

3)XIII因子Aサブユニットバリアントの比活性について

 Val34-Leu多型性の部位は、Arg37-Gly38活性化切断部位に近接している。そこでMuszbek (Hungary)氏は、この多型性がトロンビンによるXIII因子活性化反応速度に影響を与えるか否かを調べた。その結果、トロンビンによるLeu34型ホモ接合性XIII因子からの活性化ペプチド遊離の初速度は、Val34野生型の2倍以上であることがわかった。Val34-Leuヘテロ接合性XIII因子からの活性化ペプチド遊離速度は、両ホモ接合性XIII因子の中間であった。同様に、トロンビンとCa存在下での不活性型XIII因子の活性型酵素への変換速度も、Leu34型がVal34型より速かった。より速いLeu34型XIII因子の活性化は、より速いフィブリン架橋結合反応の初速度をもたらした。Leu34型XIII因子の活性化速度はより速いけれど、完全に活性化された後の比活性は、両者の間に差が認められなかった。従って、XIII因子の活性を測定する時には、充分量のトロンビンと適当な長さの反応時間を用いる必要がある。

 この報告により、英国のグループが提唱していた、Leu34型がVal34型より活性が高いという仮説が否定されたといって良い。

 

4)XIII因子Aサブユニットバリアントとトロンビンの相互作用の分子モデリング

 Komaromi(Hungary)氏は、XIII因子が如何にして活性型構造をとるに至るのかを理解し、触媒反応の経路を半定量的に推定するために、XIIIAの分子モデリングを行った。活性型構造に対応する幾何学的なパラメータを決定したところ、基質が接近できるように開放された活性部位のアレンジメントが得られた。シュミレーションにより、基質がXIIIA分子の表面に隣接できる4つの方向が予測された。純粋な量子化学的計算と、量子化学的/分子メカニクス的混合計算の結果を比較すると、触媒活性における活性中心の静電場の役割が極めて重要であることが示唆された。Komaromi氏は、彼等の研究結果から、XIIIAの活性化機構、活性型構造、酵素反応のモデルを原子レベル、原子以下のレベルで構築できると述べた。

 残念ながら、本報告者は完全にはフォローできなかったが、この方法はXIIIAの構造機能連関の理解に有用であると思われた。

 

5)真核細胞における組換えXIII因子Aサブユニットの活性と発現に対する活性化ペプチドの影響

 Kim (Korea)氏は、XIII因子Aサブユニット(XIIIA)の発現と細胞内での安定性に対する活性化ペプチドの影響を知り、酵素活性の生成機構を理解するために、以下の欠失変異体を作成し、酵母とCHO細胞株で発現させた:-11A (N末から11アミノ酸残基を欠失)、-37A(活性化ペプチド全体を欠失)、-37A/Ala314(活性化ペプチド全体を欠失+活性部位Cys314-Ala置換)。XIIIA遺伝子産物の発現は、RT-PCR, ウェスタンブロット、免疫沈降法でモニターされた。完全長の遺伝子はトロンビン依存性のXIII因子活性を細胞質に発現した。-11A変異体は同じようなレベルの酵素前駆体タンパク質を発現し、トロンビン非依存性の低い活性を示したが、野生型と同じようにフィブリンを特異的な基質とする性質は保持していた。-37A変異体は野生型と同等のmRNAレベルを示したにもかかわらず、酵素活性もタンパク質自体も発現しなかった。一方、-37A/Ala314変異体は、不活性ではあるが野生型と同等のタンパク質を発現した。このように、活性化ペプチドはXIIIAの安定な発現に必要であることが明らかになった。また、最初の11残基は活性部位をマスクするために必要であり、12-37アミノ酸配列は活性型XIIIAの細胞内でのクリアランスを防ぐ作用を持っていることになる。

 同じように37残基を欠失した変異体でも、活性部位を失ったものは発現されるが、活性部位を保持したものはタンパク質自体が認められないという結果が非常に興味深い。今後、CHO細胞でパルスーチェイス実験を行って、発現されたタンパク質が細胞内で急速に分解されているか否かを観察し、更に試験管内無細胞翻訳実験でタンパク質が全く発現されないか否かを調べる必要がある。

 

6)血漿中のXIII因子の安定性と濃縮XIII因子標準試薬の可能性について

 前々回の小委員会で、XIII因子測定の為に対照(標準)血漿を作製する可能性を探ることが決定され、前回Longstaff (UK)氏が、試作した対照血漿の-20。C、15。C, 37。Cでの保存や凍結乾燥などについての検討結果を示した。今回はBarrowcliffe (UK)氏が、新しい2種類の濃縮XIII因子標準試薬を作製し、検討した結果を報告した。それによると、chromogenic assayで測定した両者の活性は4。Cでも20。Cでもかなり安定であることが分かった。これらの濃縮標準試薬は、昨年報告された凍結乾燥血漿よりも良好であると思われるが、活性を測定した2つの研究室の数値がかなり異なるので、不確実な点が残る。

 そこで、小委員会はボランティアを募集して、更に多くの施設で活性の測定を実施するよう呼びかけることにした。

 

7)総合討論

 次回のパリでの本小委員会の議題として、以下の3つを採択することに決定した。1)XIII因子欠損症を見逃さないような高い感度を備えたスクリーニング方法の追究、2)特にトロンビン濃度に重点をおいたXIII因子活性の測定法の再評価、3)XIII因子の標準物質を設けるための国際的協力。

 最後に、次回はon yearで国際血栓止血学会と合同開催となるので、多くの出席者を集める努力をすることが了承された。

 

(文責;一瀬)