機能的MRI(fMRI)を用いた研究

 

機能的MRI(fMRI)は血中の酸化ヘモグロビン、還元型ヘモグロビンの比率から血流を評価することにより脳活動を推定する方法です。約15年前に開発され、装置および解析技術の進歩とともに広く普及し、現在では神経科学の中でもっとも多く用いられる手法となりました。高い空間分解能と非侵襲性を特徴とします。

 

これまで神経科学領域のfMRI研究はほとんどの場合グループスタディーで行われてきましたが、近年、高磁場MRIの登場により信号対雑音比が向上し、個人レベルでも精度の高い評価が行えるようになってきました。

 

脳機能の局在には個人差があります。一例として言語機能の側性化があげられます。失語症の大多数は左脳の損傷後に発症しますが、中には左脳の損傷では発症せず、右脳の損傷後に発症する場合があります。こうした「例外」は言語機能の側性化以外についても存在するのではないでしょうか。機能局在のばらつきは、半球間だけではなく半球内にもみられると思われます。個々の被験者のfMRIデータを丹念に見ていくことによりこの疑問に対する答が得られると思われます。また、個人個人の脳機能の局在を正確に評価することができれば、様々な場面でfMRIを臨床に応用することができるものと期待されます。

 

当教室では次の各点について個人レベルでの機能画像研究を目指します。

 

1.健常者での機能局在の分布について

2.術前評価(言語機能、運動機能、視覚野、聴覚野の局在推定)

3.脳損傷後の残存機能の評価

4.脳損傷後の機能改善に伴う脳活動の変化

5. 他の測定様式(fMRIのグループ研究、皮質脳波、ワダテスト、覚醒下電気刺激など)との比較

 

手法としては、一般的に用いられるGeneral linear modelによる賦活研究の他、functional connectivityと呼ばれる方法でBOLD信号の部位連関についての知見を得るべく取り組んでいるところです。

 

 

神経変性疾患の高次脳機能研究

 

これからの超高齢社会を迎えるにあたり、認知症は極めて重要な社会問題の一つです。 認知症の多くは、脳血管障害のほか、アルツハイマー病などの神経変性疾患によって生じますが、認知症の高次脳機能の正確な評価は、病気を理解し、適切な治療を行うためには欠かせません。また、認知症を初期の段階で見つけるためにも有効と考えられます。

 

これまで高次脳機能の大部分は、大脳皮質の働きによってもたらされていると考えられてきましたが、最近の研究では、大脳皮質以外の小脳や皮質下も、高次脳機能にとって、重要な役割を担っていることが分かってきています。

 

例えば、パーキンソン病。 『安静時振戦』『無動・寡動』『筋強鋼』『姿勢反射障害』の4つの運動症状を主徴とする病気として知られていますが、一部で早期から認知機能の低下を認めることが知られています。また、脊髄小脳変性症や多系統萎縮症のように、大脳基底核や小脳病変が中心の疾患でも、軽度の認知機能低下を認めることが報告されています。

 

当教室では、これらの神経変性疾患における高次脳機能の問題について、他科とも連携し、その病態解明に取り組んでいます。