SPFマウス実験区域の利用について

Last Update ; 2003/6/11

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1 利用について

1-1 遂行可能な実験内容
 遺伝子実験施設2階SPF実験区域内では,SPFマウスの飼育及びこれを用いた胚操作実験等を遂行することが出来ます。飼育できる実験動物は,SPFマウスのみです。

1-2 利用手続き
 SPF実験区域内のマウス飼育室および胚操作室を利用するためには,様式1の利用申請書および様式3のSPF実験区域内利用申請書を事前に提出する必要があります。また,各部局における動物実験・DNA組換え実験(遺伝子改変マウスを利用する場合)に係る所定の手続きを事前に行ってください。利用登録の際には,SPF実験区域への入退管理のため,指紋登録をする必要があります。

1-3 遺伝子実験施設での飼育管理
 遺伝子実験施設では,人員上の都合により,各利用者の飼育するマウスの個体管理およびケージ交換作業の一部(施設職員との共同作業)を各利用者に行ってもらう予定です。現時点(平成15年度)では,施設側では,給餌・給水および,使用済みケージの洗浄滅菌,ブリーダーからの搬入,微生物モニタリング, SPF実験区域内の清掃,消耗品の補充,ラック・自動給水装置等の保守管理,飼育経費算出のための利用ケージ数の管理を行います。利用者は,自分の飼育しているマウスのケージ交換については,施設職員と利用者による共同作業で,飼育室単位で週1回行ってもらう予定です。ケージ交換作業の参加が困難な場合は,施設職員に相談してください。

1-4 飼育経費の負担について
 現時点(平成15年度)では,ケージ洗浄滅菌費用および消毒用アルコール・エサ・手袋等の使い捨て消耗品などの購入費(ラック・ケージ等の購入費用は含まれていません),微生物モニタリング費用について,飼育経費として利用者に負担して頂きます。平成14年度の実績から,飼育経費負担は,ケージ1日あたりの利用が,算出単位となり,30円/ケージ/日となります。
例:42ケージ(1ラック分,平均5匹/ケージで約200匹)で1年間飼育した場合,
42 cagesX365daysX30円 = 459,900円

2 各実験室について
2-1 SPF実験準備室
 SPF実験区域内専用の青色の実験衣,上着,または白衣等を一時保管するロッカーおよび死体保管用冷蔵庫があります。この部屋で,専用実験衣(青衣)に着替えて,さらに,SPF実験区域入口で,SPF実験区域内専用青色サンダルに履き替えてから,区域内へ入る必要があります。

2-2 洗浄室
 オートクレーブ,洗浄用流しが設置されています。使用済みのケージ(ケージ交換あるいは飼育終了したケージ)は,いったん,この部屋に,持ち込んでください。

2-3 胚操作室
 インジェクション用倒立顕微鏡,実体顕微鏡,プラー,マイクロフォージ等が設置されています。遺伝子改変マウスの作製実験や,移植実験等を行うことが出来ます。ただし,実験に利用できるマウスは,本施設で飼育されているマウス,または,ブリーダーから直接購入したSPFマウスです。入室は,電気錠により管理していますので,登録が必要となります。

2-4 一般飼育室(交配室・純系化室・飼育室1・同2・同3・遺伝子改変マウス飼育室2)
 SPFマウス専用の飼育室です。各部屋に前室が設けられています。前室には,実験台および流しがあります。飼育スペースへ入る場合は,前室で青色実験衣から,飼育スペース専用赤色実験衣に着替え,専用緑色サンダルに履き替える必要があります。飼育スペースには,陽圧式飼育ラック,作業台が設置してあります。

2-5 導入室
 ブリーダー以外の他施設より,搬入されたマウスを一時的に飼育するための部屋です。前室が設けられ,実験台および流しがあります。飼育スペースへ入る場合は,前室で青色実験衣から,使い捨てガウンに着替える必要があります。この部屋で飼育されているマウスは,検疫終了後,SPFと確認されたものについて,一般飼育室への移動が可能となります。飼育スペースには,個別ケージアイソレーション型ラック,作業台が設置してあります。

2-6 滅菌済み器材保管室(遺伝子改変マウス飼育室1)
 本来は,一般飼育室ですが,現時点(平成15年4月)では,医学部附属動物実験施設から搬入された滅菌済みケージ等の保管に利用しています。ケージ交換やケージ補充のために,この部屋から,滅菌済みケージを各飼育室へ持ち込みます。

3 利用方法
3-1 初回利用時
 SPF実験区域を最初に利用する前に,必ず,施設職員から利用に関する現場での説明を受けてください。また,医学部附属動物実験施設の講習会を受けおいてください。

3-2 入室
@ SPF実験準備室で左側にかけてある専用青衣に着替える。(館内履きでは,黄線(テープ)で囲まれている内側には入らない。各自の上着等は,準備室内右側のロッカーへ)
A 館内履きを脱いで,青いスノコにのり,準備室手前左側の館内履き用下駄箱に入れる。
B 靴箱上部に置いてあるキャップ着用。
C 青いスノコを渡り,青いスノコ上で,手や足下を消毒用アルコールで噴霧して消毒後,手袋・マスク着用。
D SPF区域手前右側の扉付き靴箱内にある青色サンダルを,黄線内側においてからはき,指紋照合して入室。(外部からものを持ち込む場合は,よくアルコール消毒すること)
E 各飼育室の前室で,青衣を脱ぎ,飼育室内専用赤衣に着替える。(このとき,青衣と赤衣は接触不可)
F 消毒用イソプロパノールを,手袋・足に噴霧。
G 入室時,飼育室内の専用赤色サンダルに履き替える。
注意点
● 直近の入浴後に,本施設以外の動物(特に,マウス,ラット,ハムスターなど)と接触した場合,入室は禁止。入浴・着替の後,入室してください。また,他施設・研究室のコンベなどで,感染の恐れがある実験動物(齧歯類)と接触した場合は,1週間入室禁止。感染事故が発生した場合,莫大な損害が,利用者全体に及ばされる可能性があります。充分に注意を払ってください。
● 機器等を持ち込む場合は,施設職員に相談してください。

3-3 飼育室での作業の注意点
ラックの使用
● ラック前面のアクリル扉は,ケージの出し入れの後は,必ず,閉めてください。(ラック背部穴から吹き出す清浄空気の流れが,開放されたところに,偏ってしまうため)
ケージの取扱い
● ケージは,床に直接,置かず,作業台に置くこと
● ケージのフタは,金具部分で,ケージ本体と固定されるように取り付けること。(フタの取り付けが不完全な場合,マウスが逃亡することがある)
● 洗浄済みケージは,ラック上部に少数置いてあるものは,使用可.ケージが足りない場合は,滅菌済み器材保管室(遺伝子改変マウス飼育室2)から,各飼育室へ持ち込む.飼育ケージを増やす場合,週1回のケージ交換以外に使用する場合は,使用したケージ数を入口ホワイトボードへ記入すること(50円/ケージ)。ただし,導入室や洗浄室へ入室した後での機材保管室への立ち入りは,不可。どうしても必要な場合は,施設職員に相談すること。
● 新しいケージをラック内へ設置する場合は,給水ノズルがあること,およびノズルから水が出ることを必ず確認してから,ラック内の棚にケージを置き,ノズルがケージ内へ挿入されたことを確認してください。ケージの増減は,入口ホワイトボードへ記入。
● ケージ位置を移動する,または,ケージの使用を終了する場合は,使用済み給水ノズルを取り外し,前室流し台のカゴへ入れてください。
● エサは,各飼育室作業台下に設置しているエサ箱に保管してある。無くなった場合は,職員に連絡,または,入口ホワイトボードへ記入。その他,アルコール・手袋等の備品についても同様。
● 飼育室内で,tail cutなどを長時間しない.(短時間は可.長時間の時は前室で.)
● 照明点灯時間は,5:00-19:00の間。消灯時に,入室する場合は前室にある懐中電灯を用いるか,前室の照明スイッチにより一部点灯して入室し,作業後,速やかに消灯する。前室照明スイッチはタイマーに優先するので,消し忘れ注意。作業は,極力,照明点灯時間に行うこと。
前室での作業
● tail cut・採血などを,前室で行う場合は,青衣に着替えて行う。(赤衣の使用は,飼育室内のみ)
● 備品等は飼育室間で移動しないこと。
● 前室可動キャビネット内のキムタオル,キムワイプ,ビニール袋,カード,マジック,ビニールテープ,耳タグ取付け用ペンチ(タグは利用者ごとに用意してください)等は,利用可能。外部から持込みは,出来るだけ避け,チューブ等はマウス飼育室専用とすること。

3-4 飼育室での実験終了後の作業
@ 作業台を前室流しにある雑巾で拭いた後,消毒用アルコールで滅菌。
A 各飼育スペース内置いてあるホウキ,チリトリで床に散乱にした床敷や糞を掃除。
B 使用済みケージは,SPF区域での作業の最後に,洗浄室に持っていく。
C 実験区域専用青色サンダルを下駄箱へ戻し,スノコを渡って,館内履き用下駄箱で,館内履きを黄線枠外で履き替える。
D 実験に伴うマウス死体は準備室冷凍庫へ保管する。
E 使い捨て手袋,キャップ,マウスなどを廃棄して,青衣を専用ハンガーに戻す。
注意点
● マウス死体に金属製タグなどの不燃物がついている場合は,準備室で取り外しておく。
● 洗浄室へ入る場合は,専用のサンダル(黄土色)に履き替える。
● 実験区域専用青色実験衣は,ロッカーへは戻さないこと。
● 実験のため,マウスをSPF実験区域外へ持ち出す場合は,当該マウスの,SPF実験区域内への再持込は厳禁です。
● マウスのSPF実験区域外への持ち出しのために,飼育用ケージは利用しないでください。前室に,滅菌した,持ち出し用小ケージを用意していますので,これを利用するか,各自で用意してください。小ケージを利用した場合は必ず,洗浄してから,洗浄室へ返却してください。

3-5 各飼育室間の移動に関して(上位・下位)
 感染拡大防止の観点から,複数の飼育室間での作業は,必要最低限にしてください。ただし,以下に示す,清浄度の下位の部屋から2段階以上の上位の部屋に入り直す場合(例:導入室で,作業後に,一般飼育室前室へ入ろうとする場合)は,着衣の交換ならびに入浴してから,入室してください。

上位 1 滅菌済み器材保管室,各一般飼育室飼育スペース
2 一般飼育室前室,胚操作室
3 導入室前室
4 導入室飼育スペース
下位 5 洗浄・滅菌室

4 SPF実験区域内へのマウスの搬入・搬出
4-1 ブリーダーからの搬入
 ブリーダーからの搬入マウスは,SPFグレードものに限ります。現時点(平成15年4月)では,注文は,各利用者が個別に行ってください。搬入場所は,遺伝子実験施設と指定してください。マウス発注書様式はこちら。搬入作業の都合上,搬入日,マウスの種類,雌雄,週齢,匹数,ブリーダー名を前日までに,メール(E-mail: iden@idw03.id.yamagata-u.ac.jp)またはFAX(628-5900)まで連絡してください。

4-2 他施設からの搬入
 導入室で受入が可能です。ただし,所定の手続き等が必要となります。前もって,施設職員と相談してください。

4-3 他施設への搬出
 所定の手続き等が必要となります。前もって,施設職員と相談してください。

5 緊急時の対応
 異常事態・機器の不調等を発見した場合は,必ず施設職員に知らせてください。緊急を要する場合は,全館放送(*90)か,内線5902を利用してください。職員不在の場合,ホワイトボードに,その旨,記入してください。

6 遺伝子改変マウス受託作製について
  遺伝子実験施設では,研究支援活動として,トランスジェニックマウスの受託作製を行っています。詳しい内容については,施設職員(担当:中島 内線5901;nakajima@med.id.yamagata-u.ac.jp)まで,お問い合わせください。トランスジーンコンストラクトや遺伝子破壊マウスの作製に関するご相談も受け付けます。詳しい説明はこちら

6-1 依頼者側の必要な準備
 トランスジーンの構築,ベクター切り離しに必要な制限サイトの確認,トランスジーン精製に必要なプラスミドの調製(〜100オg)。トランスジーン陽性個体識別のための,PCRスクリーニング条件の確立。PCRスクリーニングは,インジェクション後,6週間の猶予がありますが,プラスミド調製までの準備が出来れば,施設側でのトランスジーン精製後,インジェクションが可能になります。

6-2 受託業務内容
@ トランスジーンの調製(プラスミド〜100オgを依頼者より預かり,施設側で,ベクター部分からのトランスジーンの切り出しおよび精製を行います)
A BDF1同士の交配で得られる受精卵(1回のインジェクションで〜200個使用)に対し,精製済みトランスジーンDNAを顕微鏡下でインジェクション(2〜3回)および偽妊娠マウスへの卵管移植
B 卵管移植により出生後3週前後のマウスからのスクリーニング用尾部の回収および依頼者への送付(依頼者は,PCR等により,トランスジーン陽性の個体をスクリーニング)
C 出生後6週間まで飼育。これ以降の施設での飼育は,飼育経費を別途負担して頂きます。
D 移送が必要な場合は,マウスの移送箱へ梱包等の作業および移送業者への引渡(移送経費は依頼者の負担になります)


6-3 トランスジェニックマウスを用いた研究例について
1.cDNAを発現させる場合
・組織特異的過剰発現による,生体内での遺伝子機能の解析
・ドミナントネガティブ体の組織特異的過剰発現による遺伝子機能破壊
・遺伝病における変異体の発現等による病態モデルの確立

2.KOマウスの解析に用いる場合
・当該遺伝子の組織特異的発現による組織特異的レスキュー
・Cre-loxPシステムにおける組織特異的Creリコンビナーゼの発現による組織特異的遺伝子破壊
・tet-ON/OFFシステムなどもトランスジェニックマウスで応用されています。

3.レポーター遺伝子(GFP, LacZなど)を発現させる場合
・組織特異的プロモーターを利用した特殊細胞などへのマーキング(GFPによるマーキングにより,フローサイトメーターによる解析や分離を可能にする)
・組織特異的転写制御シス因子の同定(細胞株等の利用では不可能な組織や細胞の場合に特に有用)
・GFPを利用した遺伝子発現の,個体内での視覚化
・毒素遺伝子(ジフテリアトキシンなど)を組織特異的に発現させて,特定の組織のみを破壊するのに用いる場合もあります。

 KOマウス技術と比較した場合,トランスジェニックマウス技術の利点は,その簡便性にあります。作製には,最短で2ヶ月程度で済みますし,ES細胞や特殊血清など,作製効率を左右する希少な材料を必要としません。そのため,費用も比較的安価となります。トランスジーンのコンストラクションも,KO技術と比べますと,制約が遙かに少なく,工程数も僅かで済む場合がほとんどです。任意のプロモーターに,発現させる任意のcDNAを連結させることが基本デザインとなります(ただし,細胞レベルで転写活性化能があるプロモーターでも,マウス組織内で発現しない場合があり,プロモーターの選択には注意を払う必要があります)。これらの特徴から,KOマウスと異なり,比較的多種類のトランスジェニックマウスを容易に実験に用いることが出来ます。
 欠点としては,ゲノムへの挿入様式がランダムであるため,挿入部位の周囲の影響を受けやすく,ゲノムへの挿入が確認されてもトランスジーンが発現しなかったり,異所性発現が認められる場合があることが挙げられます。この点については,複数のラインで,同様の発現や表現型を確認することで解決できます。そのため,同一トランスジーンで,3〜4ラインは作製する必要があります。

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