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ダイオキシンの発生源

 ダイオキシンは、いつ、どこで、だれがつくりだしたものなのでしょうか。ダイオキシンについては、以前から化学的には存在しうることはわかっていました。しかし、なんの意味もない物質なので、研究者たちはダイオキシンをあえて生成しようなどとは思ってもみませんでした。これまでダイオキシンは、意図的に作られたことはありません。

1. 農薬の不純物として
 化学の運命とは皮肉なもので、1960年代に塩素系の農薬が開発されはじめ、その製造過程の不純物として、もっとも毒性の強い2,3,7,8-TCDDがつくりだされてしまったのです。つくった人びとは、その存在に気がついていたのですが、農薬として効果のある薬剤が作り出されればよかったので、ダイオキシンには全く無関心でした。ベトナム戦争で使われた枯れ葉剤に含まれていた除草剤2,4,5-Tも当時開発されたもので、ベトナム戦争はダイオキシンの悪名を高めるのに一役買ってしまったことになります。
 枯れ葉剤は基本的には2,4-Dという物質と2,4,5-Tという物質の1:1混合物であり、ハービサイドオレンジ(Herbicide Orange)と呼ばれております。それらの物質の構造、名称は以下のとおりです。

2,4-D (2,4-dichlorophenoxyacetic acid)    2,4,5-T (2,4,5-trichlorophenoxyacetic acid

      

 2,4-Dは広葉雑草用除草剤として広く使用されておりました。この2,4-Dにもう一つ塩素を付けて強力にしたのが2,4,5-Tです。アメリカでは2,4,5-Tは初期には殺虫剤、又は木質植物の成長調整剤(森林管理、藪や堅木規制)としても使われ、日本でもダイオキシンを含む「2,4,5 -T系除草剤」は国有林で1968〜1970年に広葉雑草やかん木用除草剤として使われました。
 しかし、これまで使用されてきた農薬のうち、ダイオキシン類を含むことが明らかになったものは、そのほとんど登録失効し、ダイオキシン類を含まないものへの移行等が完了しております。当初はこれでダイオキシン問題は解決されたように思われたのですが、ダイオキシンはそんなになまやさしい物質ではありませんでした。

2. 都市ゴミ焼却炉から
 1997年オランダの研究者オーリーが都市ゴミ焼却炉からダイオキシンが発生していることを発見し、有機塩素系農薬の不純物以外にもダイオキシンが生成される可能性を示唆しました。
 この研究発表は、センセーショナルに世界中をかけめぐりました。それまでは農薬からのみ発生すると思われていたダイオキシンが、ゴミを燃やすと発生するというのです。この時点からダイオキシンに対する考え方が一変しました。
 その後の研究で、有機塩素化合物を300〜400℃くらいの温度であたためると塩素とダイオキシンの前駆体が結合し、ダイオキシンの発生を促すという事実が突き止められました。それまでダイオキシンの発生源として、有機塩素系農薬にばかりむけられていた目が、大きく方向転換しました。ゴミを燃やすという発想はそもそも燃やせば全てゼロになるという誤解から生まれたもので、科学的な知識が発達してからも物を燃やせば炭酸ガスと水になると未だに思い込んでいたのです。
 しかし実際は、物の燃焼とは「有機化合物の合成プラント」なのです。熱を加えれば、いろいろな元素が活性化され、化学反応を促進させることになります。その結果、さまざまな種類の有機化合物が生成され、その中のひとつにダイオキシンが含まれていたというわけです。

 環境庁はダイオキシンの発生源の9割を廃棄物焼却炉としております。ダイオキシンの処理には1000から1500℃の高熱が必要で、24時間高温で燃やし続ける連続方式の炉でない場合、そのつど炎を立ち上げるため、燃えはじめの数分間は温度が300〜400℃程度となり、もっともダイオキシンを発生させやすく、また燃焼中に新しい廃棄物を投入すると、炉内の温度が下がり、ダイオキシンが生成されてしまうことになります。

3. その他の発生源
 ダイオキシンは炭素・酸素・水素・塩素が熱せられるような工程で発生することがあります。金属精錬の燃焼工程、紙などの塩素漂白工程など様々なところで発生します。また、自然界でも発生することがあり、例えば、森林火災、火山活動などでも生じます。
 ダイオキシンは紙パルプの製造工場からも発生しております。紙パルプ製造工場では、木の中に含まれる高分子化合物リグニンを溶かし出して取り除くために、次亜塩素酸ナトリウムを使っております。この物質を使うことでセルロース(植物繊維)を痛めずにリグニンだけを取り除くことができるからです。しかし、次亜塩素酸ナトリウムの使用は紙パルプの製造過程でダイオキシンの発生を促すことになります。なお、何種類かのダイオキシンは、かなり以前から環境中に存在していたという報告があり、少なくとも1800年代にはダイオキシンが環境中に存在していたことが明らかになっています。