「理科教員のための組換えDNA実験研修」2003実施報告

 平成15年度文部科学省サイエンス・パートナーシップ・プログラム(SPP)の支援を受け、平成15年8月6日午後から8日午後までの2日半の日程で医学部および遺伝子実験施設を会場にして、山形県内中学・高校理科教員16名を対象にした「理科教員のための組換えDNA実験研修」(SPP採択課題番号:教012)を行った

 

実習の様子

 

 趣旨は以下のようである。

『  “ヒトゲノム”、“遺伝子組換え作物”、“遺伝子治療”等々、ほとんど毎日と言って良いほど遺伝子や遺伝子組換えをキーワードとするニュースに接しない日は無いといっても過言ではないでしょう。しかし、バイオ関係の研究開発に携わる一部の人々を除き、一般の方々は“組換えDNA”について「どのような仕組みで」「どのようにして外来遺伝子を操作するのか」など、具体的に知る機会はまず無いのが実情だと思います。

 しかしながら現実は、遺伝子組換え技術で作られたインスリンや成長ホルモンが医療の現場で使用され、遺伝子組換え技術で作られた飼料作物が家畜の飼料として使用されるなど、この新しい技術は既に人間社会に深く浸透しています。遺伝子組換え作物など賛否渦巻く問題もあり、私たちひとりひとりが遺伝子組換え技術を身近な技術として理解しなければならない状況になっています。そのためには中学校や高等学校において“遺伝子組換え”とはどういった技術なのかを体験することが求められているものと思われます。

 幸い本年、文部科学省において“組換えDNA実験指針”が改訂され、平成14年1月31日付け文部科学省告示第5号、“組換えDNA実験指針”の中に以前は無かった第2部各論第8章、“教育目的組換えDNA実験”という項目が新たに設けられており、一定の教育を受けた実験指導者(注、教員等)が実験従事者(注、生徒等)の安全確保を条件に、一般的な中学・高校の理科室で教育目的組換えDNA実験をおこなえるようになりました。

文部科学省「組換えDNA実験指針関係ホームページ」

 そこで必要となるのは実験指導者の養成です。第8章「第1項 実験の指導」の項目において、「この指針に示される実験の安全確保に関する考え方を理解しており、かつ、実験を実施した経験を有する者が実験指導者となるものとし」と規定されております。すなわち(1)組換えDNA実験指針の講義と(2)組換えDNA実験実習を経験することが実験指導者となるための必須の要件となります。

 山形県内で組換えDNA実験の設備を有しており、かつ指導が可能な施設は山形大学および慶応大学先端生命科学研究所が該当すると思われますが、なかでも山形大学医学部は早くから組換えDNA実験を取り入れた研究を行っており豊富な経験を有することから、山形大学医学部および遺伝子実験施設の教官が講師となって実験指導者養成に取り組むことが必要と思われます。

 以上のような理由からこの度、山形大学医学部および遺伝子実験施設を会場にして山形県内の“高等学校理科教員を対象とする組換えDNA実験研修”を実施するものであります。』

 

平成14年度文部科学省サイエンス・パートナーシップ・プログラム(SPP)「理科教員のための組換えDNA実験研修」

 

 初日の6日午後は開講式の後、前半を代謝再生統御学・生体分子の(旧、第2生化学)藤井順逸教授が「遺伝子生物学の基礎、バイオテクノロジー入門」と題して遺伝の仕組み、染色体・遺伝子・DNAの構造と機能、情報発現の仕組み、組換えDNA、制限酵素、PCR、DNAシークエンス等、バイオテクノロジーの基礎について講義を行った。後半は機器センターの佐藤助教授が「組換えDNA実験指針の解説」と題して「教育目的組換えDNA実験」という項目ができた経緯、物理的・生物的封じ込めの意味、教育目的組換えDNA実験に使用できる宿主生物とDNAについてなどをの講義を行って1日目、半日の講義を終了した。

 

アメリカ高校教材(Bio-Rad 社、キット関係教材(PowerPoint File)、動画など)

 

2日目の7日は午前中、発達生体防御学・感染症学の本郷誠治教授が組換えDNA実験技術の応用研究としてのウイルス学入門(「ウイルス感染症の遺伝子診断」と「ウイルス遺伝子からのインフルエンザウイルス粒子の作製」)の講義を行った。ウイルスとはどういったものを言うのか、ウイルスの構造、ウイルスの増殖過程、ウイルスと病原性、ウイルス感染症の遺伝子診断、SARSの問題等々、感染症の今後についての見通しを交えて講義した。

 午後は、遺伝子実験施設の中島修助教授から実習に使用する大腸菌と蛍光発光蛋白質GFP遺伝子について、組換えDNA実験の意義、GFP蛋白質発光の機構、組換えDNA実験の準備、片づけの仕方、滅菌等事後処理の仕方について講義を受けた後、遺伝子実験施設に移動し、組換えに用いる大腸菌の準備、大腸菌へのGFP遺伝子の導入について実習を行い、2日目を終了した。実習には、吉田匡代謝再生統御学・代謝細胞教授(遺伝子実験施設長)を始め、中島助教授、細谷朋方助手、富樫義之技能補佐員、松木真吾、高旭、日下智聖大学院生(TA)が担当した。

 3日目の8日は9時から遺伝子実験施設でGFPを発現した大腸菌の蛍光発光の観察、制限酵素処理したGFPプラスミドDNAの電気泳動、大腸菌プレート等の滅菌法、まとめを行った。午後は医学部へ場所を移し、機器センターの佐藤助教授から「高校理科室で行う組換えDNA実験実施方法・注意点」についてインターネットを用いた実践例紹介や実験指針に定められた書類の作成について解説を受けた。

 

新津市内中学校での実践

新津市内中学校での取組までの足取り

新津市内中学校での実践-報告・感想

 

 質疑討論の後、受講生から受講の感想等を述べて頂いた後、閉講式に移り、遠藤学部長から受講生一人一人に修了証が渡された。本修了証があれば受講生の先生方が各学校へ戻って生徒を対象に組換えDNA実験の授業を行うことができる。

 受講生からのアンケート結果

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