作成030909

科学技術・理科大好きプラン

SPP事業全国巡り 

山形大学実施〜「理科教員のための組換えDNA実験研修」〜

 

科学技術・学術政策局基盤政策課

 

 今回ご紹介するのは、山形大学において平成14年12月21日〜22日の2日間にわたり、県内高等学校理科教員18名を対象に実施された「理科教員のための組換えDNA実験研修」というプログラムです。

 このプログラムは吉田匡教授(遺伝子実験施設長)、藤井順逸教授、加藤丈夫教授、佐藤道比古助教授(山形大学医学部)、中島修助教授、細谷朋方助手(山形大学遺伝子実験施設)らの指導のもと、同大学の設備・施設を活用して組換えDNA実験の基礎的実験技術の研修を行い、県内高等学校教育における生命科学教育にいかすことを目的として実施されました。医学・生物学への応用例の講義を通じて、遺伝子組換え技術を理解し、専門的知識を深めるとともに、実習では、気さくな雰囲気の中で具体的な実験進行上の注意点やコツ等もきめ細かく伝達され、実践的な経験を習得することができる内容でした。

 プログラムの初日にはバイオテクノロジー入門(遺伝子生物学基礎)、分子疫学入門(疾患と遺伝子の関係)、組換えDNA実験指針の講義の後、実習室や機器の説明、準備作業の実習を経て、大腸菌への遺伝子導入実習が行われました。大腸菌への遺伝子導入実習では、寒天培地を調製しプレートへ植菌するとともに、大腸菌へDNAを添加し本来大腸菌が持っていない性質(今回は紫外線照射により蛍光発光する性質)を獲得させるといった形質転換実験を行いました【写真1、2】。

 写真1 プレートへの植菌

 写真2 大腸菌へのDNAの添加

 

プログラムの第二日目には、前日に実施した大腸菌への遺伝子導入実習結果の観察・記録やDNAの電気泳動実験を行いました【写真3】。さらには、実験器具の廃棄方法についての演示実験、実習のまとめ、高等学校理科室における組換えDNA実験実施方法や注意点に関する講義が行われました。また閉講式では修了証が授与され、参加教員が所属する学校で実験指導者として「教育目的組換えDNA実験」を行うことができるよう配慮されていました。

 写真3 大腸菌の緑色蛍光

 プログラムの終了後には、参加した高等学校教員から、「生徒に対して、先端科学分野でどのような研究が行われており、将来はどのような方向に進んでいくのかを教師が伝えていけば、教育現場は変わっていく」、「実験の方法だけでなく、実際に生徒に教えるときの注意点もとりあげていただけて良かった」、「ぜひ、高校で生徒とともに実験してみたいと強く思った」、「現在、本校にある機器で十分に行える実験である」、「マスコミの報道等では、どちらかといえばマイナスのイメージの強い遺伝子組換えに対して、いたずらに怖がるのではなく、きちんとした理解をすることが大切であると感じた」、「地域の高校(生徒、教員)と大学の繋がりを強化できるよう、このような研修を増やしてほしい」といった感想が寄せられました。また指導を行った山形大学の教官からは、「中学校・高等学校の生徒に組換えDNA実験を実際に体験してもらい、どういう技術なのかを理解してもらうことが必要である」、「中学校・高等学校の理科の先生にも、組換えDNA実験をよく理解して実習に臨んでほしい」という要望がありました。

本プログラムが実施された背景には、組換えDNA実験指針の改訂(平成14年1月31日文部科学省告示)により、教育目的組換えDNA実験の項目が新設され、P1レベル実験(注1)の一部を中学校・高等学校の理科室で行えるようになったことが挙げられます(注2)。本プログラムの参加教員は、組換えDNA実験指針に示される組換えDNA実験の安全確保に関する考え方を理解しかつ実験を実施した経験を得たため、実験指導者になることができます。実験指導者を有する中学校・高等学校では、施設や条件が整えば授業に遺伝子組換え実験を導入し、生徒に体験させることができるという点で本プログラムは意義深い取組でした。

 

注1)P1レベル実験とは、通常の整備された微生物実験室程度の仕様を満たす実験室で行えるレベルの実験で、実験中は窓やドア等を閉めて物理的な封じ込めを行うものです。

注2)組換えDNA実験指針、附属資料4「(1)実験室の設計」では、「実験室は初等中等教育機関の通常の理科実験室と同程度の設備を備えていること。」となっています。

 

<文部科学省教科書課の転載許可により、「文部科学時報」(株)ぎょうせい発行、平成15年8月号より転載。>

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